かつきよ

望みのかつきよのレビュー・感想・評価

望み(2020年製作の映画)
3.6
堤幸彦監督作品で、石田ゆりこと堤真一の主演作品ということでほかの前情報無しの勘視聴!!

監督と雰囲気からサスペンスかと思いきや、サスペンスではあるんだけど、どっちかっていうとドキュメンタリーっぽいシチュエーションヒューマンでした。
捻ったり、目を見張ったりする展開とか設定はなくて、息子が犯罪者かもしれない、という状況の中で家族の心理とか葛藤とか想いとか、周りとの関係とか世間の反応とか、そういったものをリアルに描写していく映画です。
映画なのである程度誇張されてるなぁという表現はありますが、温度感はリアル寄りで、結構見ていて辛くなりました。

映画には基本フィクションを求めていて、エンタメとしての娯楽を求めているので、こう言う作品は苦手、、、。ですが、不思議な見応えは感じました。

タイトルの望み、が本当いい感じ。いろんな望みを感じたし、映画ラストも望みを感じられた。このシンプルなタイトルがよくここまでこの映画を表現できるなと思うほどぴったり。

堤さんのキャラクターは理想的な感じで良かったです。人間的なんですけど、歪んでないと言うか、すごくフォーマルな感じ。

石田ゆり子さんの役どころがかなり絶妙でした。息子が事件に巻き込まれて、被害者だったら死んでる。生きているとしたら加害者。そんな究極の2択しか存在しない世界だったら、加害者でも生きていてほしいと願う母の究極のエゴ。
フィクションだからはっきり描かれていたけど、これだけはっきり公言できるかどうかは別として、リアルに巻き起こりそうな感情ですよね。

そんな感じ、、、、




あとはネタバレ感想ですーーーーーーー













※ネタバレ注意















途中までは胸糞系映画かなと思って結構辟易としてたけど、最後で突然雰囲気が変わる
わりとバッドエンドのはずなのに、なんか希望がある終わり方
だからこそ切ないと言うか、、、
歯切れが悪いわけじゃなくて、とにかくやるせないと言うか、それでも望みはある感じ、、、

ここにきて「望み」ってこう言うことでもあったのかな、と思い謎の感動

このストーリーでこんな終わり方できるって、堤監督はやっぱり天才だなと思う。
話は好みじゃなかったけど、演出は魔術的だなとさえ思えました。

なんにせよ色々と考えさせられる作品
自分的にはハッピーエンドみたいな雰囲気に見えてしまったけど、結局息子は死んでしまってるわけだからハッピーじゃないんだよね

でも、途中の展開から、もし息子が加害者で生きてたら、、、
さらに言うと、被害者だとしても、生きてたら、、、
父は職を失うし、妹は人生がぶっ壊れるし、お母さんは良かったと思いながらもそんな状況の中で崩壊していく未来しか見えない。
世間からは迫害されて、一家は再起不能になりそう。

だから、被害者で死んでくれたことで世間は同情してくれて、元の生活と平安が戻ってきたように見えるラストは、なんというか、リアルな残酷さを感じると言うか、、、
人が死んだ方がいいなんてこと絶対にないっていう倫理観に一石を投じる作品に思えるのは、考え過ぎですかね。
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