サラリーマン岡崎

空白のサラリーマン岡崎のレビュー・感想・評価

空白(2021年製作の映画)
4.7
発言力が強い者が、発言力の低い者へ一方的にコミュニケーションを取る世の中の構図を皮肉った作品。
古田新太から松坂桃李もだが、古田新太から娘、寺島しのぶから松坂桃李やボランティアの若い女性、先生から生徒…そして、マスコミから取材対象者…。
発言力の強い者の言い分をとりあえず飲み込むが、それに疲弊する。
ビジネスでもよくある構図だし、もう日常茶飯事にこの感覚は感じている。。。

だからこそ、田畑智子や藤原季節のように、中立的な立場の役者がとても良い役割をしている。
観客は発言力の強い者・弱い者、どちらの立場も見ており、まさに中立的な立場の彼女たちと同じような状態である。
だからこそ、その中立的な立場の者が寄り添ってくれたときにとても温かみを感じる。

そして、古田新太の職が漁師で、松坂桃李の職がスーパーというところも
この構図を表現していて面白い。
漁師が獲った魚をスーパーに卸すこの構図はまさに一方的な二人の関係を表しているよう。
しかし、最後にスーパーの先にいる消費者から感謝されるシーンがあることで、一方的ではなく歩み寄ることで人は関係が生まれることを強調する。

吉田恵輔はよく二者間の一方的なコミュニケーションによる関係性の悪化をよく描く。
本作の英題は「intolerance」、不寛容とのこと。
お互いの気持ちを想像し、受け入れることでもっと人は幸せになれるのに、なかなかそれができない。
本作の前に『由宇子の天秤』を観たが、どちらもメディアを扱う作品だった。
そこでも、相手を想像することの重要性が一部描かれる。