晴れない空の降らない雨

街の灯の晴れない空の降らない雨のレビュー・感想・評価

街の灯(1931年製作の映画)
4.2
 時代はすでにトーキーだったが、あくまで音響・音楽のみに使用を限定し、おのれの声を隠し続けるチャップリン。ちなみにチャップリンの娘ジョゼフィーヌは本作が一番好きらしい(淀川談)。
 正直あんまり面白くねーなと鑑賞中ずっと思っていたが、残り30分のところで唐突にボクシングが始まり、これがリズミカルで反復しながら変化していくのが楽しかった。そしてラストにやられた。ヴァージニア・チェリルが見せる複雑な表情。少なくとも、直前に会った長身イケメンの客とのギャップに対する失望が混ざっていたことは間違いない。チャップリンがその人だと知り、何とか作り出す笑顔のぎこちなさ。それに対して、彼女の幸せな現在を知ったチャーリーの満ち足りた笑顔の悲痛さ。
 なんて残酷な結末だろうか。それに対して『黄金狂時代』のなんとお気楽なことか(もっともこの作品にしてもキスシーンは後にカットされた)。これは20年代と30年代のギャップだろうか。チャップリンの衣装はいつも以上にみすぼらしく見え、恐慌にあえぐ1930年代のアメリカ国民の心に突き刺さったのではないか。チャップリンは、ますます社会派ヒューマニストとしての側面を露わにしていく。
 
 それにしても時々ゲイ?と思うくらいオネエみたいにクネクネするのは何なの。