カツマ

ジョン・ウィック:コンセクエンスのカツマのレビュー・感想・評価

4.8
もしオスカーにアクション部門またはスタンド部門があったなら、間違いなく本作はノミネートしていたことだろう。そして、恐らく高確率で万感の拍手に迎えられ受賞していたことだろう。それほどに今作に詰め込まれたアクションの質量、アイディア、クオリティは圧倒的だ。これはもはや金字塔の域。アクション映画の歴史に刻まれる、伝説級の一本だ。

ジョン・ウィックシリーズの4作目となる本作は監督のチャド・スタエルスキが続投するなど、その世界観を完璧に引き継ぐ形で製作された。上映時間は3時間弱と長尺になったが、そこに凝縮された膨大なアクションシーンを鑑賞すれば、体感時間は秒で過ぎた。メインキャストのキアヌ・リーブス、ドニー・イェンらはもちろん、この映画に出演したアクション俳優の一人一人に拍手を送りたい。大阪、ベルリン、そして、パリ。世界を股にかけ、地上最強クラスのアクションをたらふく堪能できる作品だ。

〜あらすじ〜

殺し屋ジョン・ウィックはニューヨークの地下に潜伏し、復讐の時を待っていた。ニューヨークの首領バワリー・キングは彼に防弾スーツを与え、仁義なき闘いが始まろうとしていた。
組織の壊滅のために動き始めたジョンは、まずはアラブにいる首長を殺害。それにより、ジョンは全世界から狙われる身となり、巨額の懸賞金がかけられた。新しい首領のグラモン侯爵は、まずはジョンのホームでもあったニューヨークのコンチネンタルホテルを容赦なく爆破し、支配人のウィンストンの身代わりとして、コンシェルジュのシャロンを射殺する。更にグラモンは盲目の殺し屋ケインを呼び寄せ、ジョンの討伐へと向かわせた。
ジョンの向かった先は日本、大阪。大阪のコンチネンタルホテルの支配人、シマヅ・コウジとは旧地の仲で、ジョンはコウジに匿われる形でホテル内に滞在した。が、そこへグラモン侯爵の刺客とケインが襲来。ホテル内での殺しは御法度という掟はあっさりと改訂され、ホテル内でジョンを含めたコウジたちホテル側vsグラモンの手下たちのバトルが幕を開けるのだった。

〜見どころと感想〜

今作は大きく三つの構成に分けられており、世界の主要都市を舞台装置として機能させることで、アクションシーンの数々を芸術の域にまで到達させている。まず大阪編ではドニーと『スペシャルID特殊身分』での共演もある日本人アクション監督の川本耕史を起用しており、舞台だけでなく、アクションも日本的にすることを徹底した。更にナイトクラブを舞台に狂乱の宴を創出したベルリンパートの異様なまでのカッコよさ、更には伝説クラスの階段落ちを成功させるなど、エッフェル塔の周辺まで舞台装置にしてしまったパリ編は、これまで観たどのアクションシーンよりも胸が高鳴るものだった。

主演のキアヌ・リーブスは自身も激しいアクションを見せているが、特に今作ではその強さが無双クラス。いつもは早い段階で負傷する役なのだが、今作でのタフさは異常で、いつも以上に強さを感じる役柄となった。新たに参入したキャストでは日本編の真田広之、リナ・サワヤマが序盤の展開に華を添えた。リナの本業は歌手であり、目下、海外も含め世界中で大ブレイク中。ここ日本でもサマソニのマリンステージに立ったり、東京ガーデンシアターでの単独公演を成功させたりと、今、注目の日本人アーティストである。ビッグネームとしてはドニー・イェンのインパクトが絶大で、盲目の殺し屋という難しいアクションをクールに演じた。

これまでもジョン・ウィックシリーズのアクションは素晴らしかった。が、今作ではそのアクションへの美学、そして、スタントマンへとリスペクトが非常に分かりやすく込められているように思う。監督がスタントマン出身ということもあり、とにかくアクションシーンの魅せ方が半端じゃなく上手く、エンタメ性も抜群。特にベルリンパートから先は息つく暇を与えない怒涛のアクションの連続である。

これぞキング・オブ・アクション映画。ここまでアクションのアイディアが詰め込まれた映画はなかなか出会えない。白熱のシーンの連続の果てに待つ壮絶なバトルのラストが、あまりにも美しかったこともこの映画を印象的にしてくれていた。

〜あとがき〜

素晴らしかったです。ここまでのレベルのアクション映画が観られるだなんて、もはや感動的ですらありました。劇場で観ていたら多分満点を付けていたと思います。それほどに今作でのアクションシーンは突出した凄みを感じました。

昔の特撮のようにスタントの一人一人がキッチリ見せ場を作ってくるところも最高で、スタントへの愛をここまで感じる作品も珍しいでしょう。ジョン・ウィックシリーズはまだまだ続けてほしいですが、とりあえずはアナ・デ・アルマス主演のスピンオフが待機中なのでこちらを楽しみに待ちたいと思います。
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