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日本沈没のHKのネタバレレビュー・内容・結末

日本沈没(2006年製作の映画)
3.1

このレビューはネタバレを含みます

※軽いネタバレです。・・・日本は沈没しません!!!!(怒)

小松左京原作によるSF小説を「平成ガメラシリーズ」などで特撮監督を務めた樋口真嗣が再映画化。森谷司朗監督のリブート版。キャストは草彅剛、柴咲コウ、豊川悦司、及川光博などなど

日本で頻繁に大地震が発生。アメリカの調査により、日本が後40年以内に地殻変動で消滅することが判明した。さらに、物理学者の田所博士と潜水士の小野寺と結城による海底調査により、日本があと一年以内で沈没するという新事実が判明してしまう。解決に向かおうとした石坂浩二は噴火に巻き込まれ死亡。さらに、代理大臣はすぐに見切りをつけて海外にとんずらしてしまう。この窮地を救うには超強力な爆弾をプレートの亀裂に掘削機で打ち込み中から爆発させ切り離すという田所博士が生み出した大胆な作戦しかなかった。果たして潜水士達は作戦を完遂させ日本を沈没から救うことができるのか?

まず、旧作の日本沈没は好きな人には申し訳ないががあまり好きじゃありません。災害映画だから人々が無惨に死ぬ描写が民衆視点で全面に出されると思ったら、ずっと上層部の作戦会議のシーンと丹波哲郎演じる総理大臣の交渉シーンや閣議シーンばかり押し出していた印象が残っていて、思ったよりも退屈に感じてしまってあまり好きになれませんでした。(円谷組の本領発揮ぶりを観たかったよ。)

ですが、今作の監督は樋口真嗣。私の大好きな「ガメラ3~邪神覚醒~」の渋谷破壊シーンで邦画史上、最も悲惨な災害シーンを描いた男。人々が大量に死ぬシーンが大好きな自分としてはこの人が監督してくれれば名作はおろか傑作になるに違いない!…そう思っていました。

まず良い所を言います。一つはやはり樋口さんが率いる特撮陣がVFXも駆使して織りなす見事なディザスター描写です。当時はまだCGに対して批判的な声があったのは認めますが、今見てみてもその迫力はすさまじくあまりにもむごい。序盤の静岡県の倒壊シーンの炎に包まれた町や中盤以降の地盤沈下や火山噴火、大津波や土砂崩れに巻き込まれて落ちて死んでいく人々の描写、掘削機に爆弾を投下した後の爆発シーンなど、樋口さんらしい世紀末感溢れる特撮演出はやはり個人的にはビンビン来ました。素直に大好きです。

それに、旧作が政治劇に終始してしまった所を改善して、今回は研究者や民間人など、災害に巻き込まれる側に焦点を当てて物語を展開していこうとする心意気は本当に良かったと思います。政府のはぐれ物たちが事態を解決しようと齷齪する点は後のシンゴジラにも通じています。そういえば二つとも大臣が飛行中に撃ち落されてますね。

しかし…ここから悪い所です。序盤からちらついていましたが、終盤に近付くたびに加速度的に酷くなってきました。
…なんじゃあの臭すぎる演出の数々は!! 「テレビの視聴者が思いつくベタなドラマ演出ベスト10」を全部てんこ盛りしたかのようなあまりにもベタすぎる演出を終盤に行くごとに大量に見せていきます!

まず序盤の小野寺と玲子との会話シーンからあまりにも説明的過ぎる会話から始まってしまいます。そして樋口真嗣監督作品全編に通じる悪い癖…あの間よ!!なんじゃあの幼稚園のお遊戯会並みのスローペースの緊張感の無い会話は!あんなんじゃ緩急がついて緊張感が持続しなくなっちゃうじゃないの!そのせいで後半になるにつれて事態が深刻になるのに全然画面に引き込まれないわ!特撮は頑張っているのに心に来るものは半減よ!

そしてその極め付けが、終盤の小野寺と玲子のお別れのシーン!個人的にはあの後会わない方が映画として絵になるのに、わざわざ再会させて主題歌に合わせてスローモーションで抱擁!ここまでベタベタで下品な演出久しぶりに見たわ!どんだけドラマ演出の引き出し少ないんだよ樋口さん!酷すぎるよいくら何でも!

その後、ラスト付近で爆弾設置成功してからのスローモーからの柴咲コウが振り返る演出も…本当に臭い。ベタベタにもほどがある。テンプレートのオンパレードとはこのことだよ!

最後は大団円エンド…ハッピーエンドは嫌いじゃないとはいえ納得いかないよ。旧作と差別化するとは言え、いくら何でもあんな展開見せられてあのラストはねえ。消化不良も甚だしいわ!

それに俳優の演技もひどい。草彅君も藤岡弘、と違って覇気がないし全然頼り気がないのに最後は日本救っちゃうし。柴咲コウはまだ頑張っていたけどやはり映画のせいでイメージが…ただ一番酷かったのは豊川悦司じゃ。なんだあの「フザケルナー!」からのパソコンクラッシュ!ちょっと演技が空回りしてる感が否めませんでしたね今回は。

まあ、いろいろと書きましたけど何だかんだで良い所もあるんですがね。本当に樋口特撮は世界レベルに匹敵するほど迫力満点なんですけど、そこを最高潮に持たせるための細部の演出が樋口さんにはできませんでしたね。なんという宝の持ち腐れ。それでも旧作よりかは迫力あるのでちょっと多めに点数つけます。

そういや、僧侶役で富野由悠季さんがカメオ出演してましたね。いっそのこと実写デビューとして富野監督にメガホン持たせた方が良かったのかもしれません。

この映画観て学んだことは、間延びした会話は死んでも映画でしちゃいけないってことですね。日本映画独特の間って、それが活かされるときもあるんですが如何せん生かせない人がやるとただただ冗長に見えて緊張感がなくなってしまうんですよね。そう思うと、岡本喜八をリスペクトしてその間をできる限り潰したシンゴジラの会話劇がどれだけ優れているか再確認できる内容でした。

そして何よりこれです。災害映画にメロドラマはいらない。これに尽きます。当時は冬ソナとかの韓流恋愛ドラマブームのせいかどんな題材でもメロドラマつけてましたからね。本当に嫌な年代でしたよ。

最後に…樋口さん。今後はずっと特撮監督に専念して頑張ってください。監督するんだったらこのレビューで書いたこと最低限反省して作ってください。いずれにせよ、樋口特撮は大好きで信者です。今後とも見れることを楽しみにしています。

進撃も…観てみようかのう…
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