mimitakoyaki

アンモナイトの目覚めのmimitakoyakiのレビュー・感想・評価

アンモナイトの目覚め(2020年製作の映画)
3.7
観光客向けに浜辺で化石の採掘をして売りながら、ひっそりと生きる古生物学者のメアリーと、鬱の療養としてやってきた化石収集家の妻シャーロットのひとときの秘めた恋愛を描いた作品です。

メアリーを演じたのがケイト・ウィンスレットでしたが、彼女の演技が本当に素晴らしくて、貧しく人との関わりもなく、年老いた母親と海辺の片隅でひっそりと暮らしていて、まるで彩りのない、でもそうとしか生きられない中年女性を見事に演じていました。
体型も中年らしく、人生に疲れたような覇気のない顔。
こんなに華やかさを消せるもんかなと感心しますが、でも頑なにそういう生き方をしてきた凛としたものもあるんです。

荒波打ち寄せる荒涼とした浜辺で、泥に塗れて化石を採集したり浜でおしっこしたり、中年体型の裸も晒すのに驚かされます。
貧しくても、好きな化石採掘をしながら細々と生きていく事を選択する強さに美しさを感じさせます。

女性同士の恋愛、荒涼とした海、見つめる視線、男性社会の中で傷ついた女性たち、という点は、ほんとに「燃ゆる女の肖像」とすごく似てるのですが、「燃ゆる…」の方は、女性同士の恋愛を描きながらも、男社会によって抑圧された者同士の連帯が丁寧に描かれていて、その点では、本作では燃えるような性愛描写が大きな山場になっていて、シスターフッド的なところは案外薄かったのが、もったいなかったと感じました。

メアリーは、古生物学者としての実績がありながらも、女性ということで認められなかったり、男の手柄に塗り替えられたりしています。
しかも、同性愛者ということで、人と距離を置きながらひっそりと生きていくしかなく、でも男性と結婚して子どもを産むというような選択はせずに生きてきた人です。

シャーロットも、短い夫とのシーンの中でも、彼女が自分の意思を尊重されることはなく、彼女が食べるものすら夫が全部決めて、しかも自分と差をつけたりとか、決して対等な関係ではないし、彼女が抱える心の痛みにも寄り添って一緒に乗り越えてくれるようなこともなく、裕福で素敵なドレスを身に纏っていても、心が空っぽで虚しく生きてる女性です。

物語の中では、そうした彼女らが抱える孤独や一人の人間として認められない虚しさ、抑圧への憤りに対する共感や連帯というものがあまり描かれてなくて、孤独な女性が互いに惹かれ合うっていう風になってたから、少し物足りなく感じました。

でも、ケイト・ウィンスレットもシアーシャ・ローナンも素晴らしかったし、ラストのメアリーが貫いたものも良かったです。

メアリーもシャーロットも、それぞれ実在した人物とのことで、だけど、彼女らが恋愛関係にあったのはあくまで想像したことであり、事実をもとにしたわけではなかったようなので、それ勝手にやってええのんか?という引っかかりを感じました。

40
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