もものけ

ショック・ドゥ・フューチャーのもものけのネタバレレビュー・内容・結末

3.0

このレビューはネタバレを含みます

CM曲の仕事を受けたアナは、ワンルームで作曲する日々に悶々としていた。
機材の故障で呼び出した修理者が、日本製のROLAND CR-78というリズムマシーンを持っていることを知り、そのサウンドに一目惚れしたアナは、翼を得たように作曲への意欲が湧き上がるのだった…。





感想。
この作品は、女性優位ではなかった音楽業界へ、女性でありながら新しい世界を切り開いた青春ドラマのようにCMされていますが、スタジオ制作が普通の時代に、ドラムマシーンなどの音響の高い楽器が、防音設備のない家庭で騒音になる問題点からまだ一般化されていない作曲の分野を身近にした日本製ROLANDの名機リズムマシーンROLAND CR-78が、後の80年代の音楽シーンにいかにショックを与えて世界的な知名度を確立したかという壮大な音楽業界での歴史を、ワンルームの演出で表現した音楽映画です。
まだ生楽器での作曲が主流で、打ち込みなどのデジタルサウンドが少ない時代をよく表しています。

テクノやポップミュージックの黄金期でもある80年代を知る人には、あのサウンドの独特さとシンセサイザーに被るリズムマシーンの音は、様々な映画音楽にも利用された懐かしい青春時代でもあり、青春映画として描かれる中で懐かしむ愉快さがたまりません。

現代ではPCのモニターで全てをコントロールできる手軽さですが、当時は山のような機材を繋ぎ合わせて、スライダーやツマミのボリュームスイッチと、ネオン管のようなアナログモニターのみが、宇宙船の操縦席のように連なる筐体のカッコよさと相まって、一つずつ電源を入れる面倒な作業すらも楽しく思える、邪魔なほどの部屋をいっぱいにさせる機材の未来感が憧れでもありました。

物語では、アナが行き詰まる作曲で出会うROLAND CR-78の凄さに、まさに「ショック・ドゥ・フューチャー」タイトルのまんま。
そしてパリっ子が日本の東京に憧れる会話が意外に聞こえて、音楽好きな世代違いの二人の会話の可笑しさなど、うまく演出されております。

アナがROLAND CR-78で作った曲は、まさに80年代で個人的には好みなのも良かったです。
音楽映画となると、作中の音楽へ好みが分かれてしまいますが、私には大好きだったサウンドなので、すんなり入り込めました。

"なぜみんな英語で歌いたがる?"
華の都ともいわれたパリが、音楽シーンではアメリカへの憧れが現れてしまうセリフに、アメリカの音楽業界の影響力への嫉妬ともとれ、日本と同じに見えてしまうほど、世界で聴かれる音楽といえばアメリカの偉大さを感じます。
クラシック音楽以降、音楽の新しいジャンルを作り芸術までに引き上げたアメリカ、映画・音楽では世界中の憧れの的でございます。

キャスティングの演技は地味で、淡々とすすむストーリーなので、70分の尺のほどよさから飽きずに観れますが、それ以上であったら間延びしていた程度の内容でもあり、主人公がスターダムへ登りつめるドラマティックな演出もない為、非常に地味な作品ともいえます。

個人的には懐かしむサウンドの秘話のような立ち位置の作品へ、3点を付けさせていただきました。
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