great兄やん

アル中女の肖像のgreat兄やんのレビュー・感想・評価

アル中女の肖像(1979年製作の映画)
4.7
【一言で言うと】
「堅実をぶっ壊せ」

[あらすじ]
ただ酒を飲むためにベルリンへとやって来たとある女性。途中浮浪者の女性を引き連れて酒場から酒場へと放浪の旅を続けるが...。

映画は藝術であり、藝術は爆発である。まさにそんな映画であり、もはやアートを観ているかのようだった。ハッキリ言って全くもって意味不明な映画ではあるが、こういう度を越したフリーキーな映画は個人的に大好物でしてね…ある意味ヨルゴス・ランティモスのようなシーン毎の鮮烈さがありつつもファスビンダーのような引き締まった画の堅実さが表れた、まさに唯一無二すぎる作品とも感じましたね🤔...

とにかくショットの構成や色合い、そして人物配置など、映像面におけるセンスに関してはマジで筆舌に尽くしがたいレベルの美しさが爆発しまくってたが、それ以上に終始やりたい放題に等しいシュール且つ強烈なシーンが余りにも多すぎてもはやそれどころではなかったです笑。酒を飲み終えたかと思えば急にグラスを叩き割ったり、カツラを被って綱渡りをしたと思えば次のシーンで燃え盛る壁に向かって車を突進させるスタントをやったりと、そんじょそこらのバラエティ番組よりも体を張りまくる主人公の姿に呆然どころか笑ってしまうほどでしたね😅...

それにアル中主人公を演じたタベア·ブルーメンシャインの存在感も凄まじいのなんのでしたし、なんと言ってもあの人を選ぶようなコスチュームに等しい衣装を見事に着こなしているのがメチャクチャカッコ良すぎる。自分で衣装を担当しているのもあってか、奇抜にも関わらず世界観に順応したあのデザインはまさにファッションショーを見ているかのような美しさでした...

とにかく破滅的で厭世的で、なおかつ論理的思考をかなぐり捨てたほろ酔いならぬどろ酔い映画ではあったが、圧倒的なショットにおける形式美や主人公の美貌、そして西ベルリンから放たれる魅惑的かつ蠱惑なロケーションといった意味でも酔いしれる嗜好品のような一本でした。

正直ストーリーなんて有って無いようなもんだし、ただ主人公が酒を飲むためにベルリンへと赴くだけの映画なのでもはや掴み所すらないのだが、それでも鮮烈かつ強烈な映像体験の連続に終始目が釘付けでしたし、堅実的な女性三人衆や小人のおじちゃん、そしてパンおじさん(笑)など何かしらのメタファーが含んだキャラクターが出てくるのだけど、そんなの初見で解るわけでもないしそもそもそんな事考える暇さえ無いくらい笑。

今作含め3作品のレトロスペクティブが無ければ存在すら知らなかったウルリケ·オッティンガー監督ですが、こんな自分好みすぎる監督作品を上映終了までに映画館で観れた事が何よりも嬉しいし、Blu-rayが発売されたら是非とも手中に収めたい一作。出来るならば残り2作品を観ておけば良かったと後悔してるくらいです😖...