ケイスケ

ノマドランドのケイスケのレビュー・感想・評価

ノマドランド(2020年製作の映画)
4.1
「ホームレスじゃないわ。ハウスレスよ」

映像がめっちゃくちゃ綺麗。この美しさを見ているだけでもジンワリ泣けてくる。かと思えばバケツにウンコしたり、トイレにぶち撒かれたゲロが出てきてゲッ!ってなる😅笑。

アメリカ・ネバダ州に暮らす60代の女性ファーンはリーマンショックによる企業の倒産で住み慣れた家を失ってしまう。彼女はキャンピングカーに荷物を積み込み、車上生活をしながら過酷な季節労働の現場を渡り歩くことを余儀なくされる。現代の「ノマド(遊牧民)」として一日一日を必死に乗り越え、その過程で出会うノマドたちと苦楽を共にしファーンは広大な西部をさすらう。

フランシス・マクドーマンドとデヴィッド・ストラザーン意外は実際のノマドの人々を使った本作。エンドロールで『リンダ・メイ役 リンダ・メイ』って出るもんだから「えっ!実際のノマドの人!?」って驚きが。特にリンダ・メイとスワンキーが圧倒的存在感。マクドーマンドとストラザーンはさすが名優なので、この2人のやり取りも味わい深いです。

本作で出てくるノマドの人々は、一生懸命働いて社会に尽くしてきたのに様々な理由から放浪生活を余儀なくされます。もちろん彼らの生活は過酷なんですが、同時にノマド同士のコミュニティが本当に楽しそうでこの生活も良さそうだなと見えてくる。自分みたいな軟弱にはたぶん無理やが笑。

マクドーマンド演じるファーンは屋根の下で暮らそうと思えば姉もいるし、デヴィッドと住むこともできたはず。しかし彼女はノマドの生活を選びます。最初、彼女は自由に生きているように見えますが過去が明らかになると、実は過去の記憶に閉じ込められているんですよね。人生の生き方について考えさせられます。

映画を通して他国で何が起きているか知ることは非常に重要な経験だと思います。自分にはなかなか馴染みがないノマドの文化を知ることが出来たし、ドキュメンタリーとフィクションが絶妙なバランスで描かれている素晴らしい傑作だと思います。これは各映画祭で最高賞を取るのも納得でしょう。絶対にスクリーンで観るべし!