B5版

ノマドランドのB5版のレビュー・感想・評価

ノマドランド(2020年製作の映画)
3.5
ノマド生活といえば聞こえの良い、余裕のある「丁寧な暮らし」を想起させる言葉だと思ったのだが、don't haveじゃなくてcan'tのほうだったのか…
金持ちがやるワーケーションと貧者の非定住型労働はまるでわけが違う。
主義主張のための目的と、やむを得ない生活の手段。
今作は一箇所に定住しない人たちの悲哀と自由の両方、等身大の日常を追った話だった。
途切れなく広がる大地、日暮れに滲む濃紫と紅に色づく美しい景色にと似合いなのは確かに侘しさと憂いの感情の方ではあるが…

人生の終盤戦では生まれた時から傍にいた人とさえも別の場所で生きていく、それは当たり前に。
人生の重荷の中身は人それぞれ。
軽やかな身軽さを羨ましく思う日もあれば、静寂が過ぎる孤独を疎ましく思う日もあるのだ。
ジョシュア・ジェームズ・リチャーズの描き出す映像美に触れて、流浪の民の孤独と自由に想いを馳せる。
折に触れては一人きりで観たい作品。
B5版

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