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The Stunt Double(原題)のbackpackerのレビュー・感想・評価

The Stunt Double(原題)(2020年製作の映画)
4.0
【縦画面】
僅か9分の短編ながら、スマートフォン時代の映像制作についての教材としておそろしい程の完成度を誇る、iPhone12発売に併せて制作されたデイミアン・チャゼル監督による短編です。

本編とは別で、撮影風景の動画も挙げられておりますが、チャゼル監督ご本人がiPhoneにて撮影を行なっている様子が拝見できます。
名監督の手腕は大きいものの、そんじょそこらの手持ちカメラ以上のクオリティの映像が、iPhoneで作れる世の中になったのか」と驚愕してしまいます。


【面白い点その1】
徹底して、縦の見せ方に意味性がある絵作りがされていること。

構想ビルからのダイブや、階段を駆け上がるシーンのように、動きが縦向きの展開は、映画においてはよくあることです。
しかし、一般的なスクリーンは当然横に広いため、広大な平原なんかを写すにはもってこいでも、トム・クルーズがブルジュハリファの側面にへばりつく姿を撮るならば、縦画面の方が、その高さをよりわかりやすく訴えかける構図とすることができます。

(個人的には、ゴジラを下から見上げる構図には、縦画面はどハマりするなと感じております。)


【面白い点その2】
どこか懐かしさの漂う、古典的映画ジャンルを意識したシークエンスが連続する

白黒映画のワンシーン、プロペラ戦闘機からの機関銃攻撃、西部劇の決闘の一コマ(このシーンが一番好き!)等、今や古めかしいシークエンスの数々。
まさしく、廃れたジャンルの映画であっても、「構図が変われば印象は激変する」ということの証左ですね。

こんなにも印象が変わるとは思わず、呆気に取られました。


ほんの9分の短編でも、こんなに面白い作品が作れるのは、チャゼル監督の才能あってこそとは思います。
それでも、縦画面が当たり前となった新時代のクリエイター達から、更に面白い作品が生み出される日は近いと実感します。

これからの映画はどうなっていくのか?という点も含め、色々と感慨深く楽しませてくれる、良作でございました。
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