名だたるミュージシャンが絶大な信頼を寄せる老舗スタジオの歴史に迫るドキュメンタリー。冒頭、銀座のシンボル和光前を歩く男性の姿を追う画がとてもよかったです。晴れの日も雨の日も夏の日も寒い日も、ずっと変わらず45年の長きにわたりスタジオ機材を最良の状態に保ち続けるベテラン社員への敬意が伝わってきました。
スタジオミュージシャンもSSWもエンジニアも、本作に登場する顔ぶれは皆、この場所とそこで鳴る音が好きでたまらないという顔をしていてとにかく全員楽しそう。本作の主題歌として新たにレコーディングされた曲の製作過程を通しても、そのワクワク感と喜びがとめどなく伝わってきます。過去の逸話としては、高橋幸宏&坂本龍一を主軸とする80年代のあれこれがことごとく興味深かった。い・け・な・い ルージュマジックは当時、ふたりがきわめて感度の高いアンテナを張り巡らせていなければ世に生み出されることはなかったのかもしれない、なんてことを思いました。
こうしたエピソードは枚挙にいとまがないとは言え、各々が抽象的な思いの丈を語る部分についてはやや平板かつ冗長で、何かしらもうちょっとこう気の利いた演出なり音源なりが欲しかったな…。斜め前にいらしたど真ん中世代と思しきおじさま、途中から高らかにいびきをかいておられましたもの。HANAちゃんが歌入れを始めたあたりで何とか覚醒してくれてほっとしたけど、あのままガーガーやられ続けたら席を立って一喝してたかもしれない。寝るならひとりでお静かにね!福島県人としては、佐野元春バンドの写真に笑顔で収まる深沼元昭氏を発見できたのが嬉しかったです。