あーさん

ベイビー・ブローカーのあーさんのネタバレレビュー・内容・結末

ベイビー・ブローカー(2022年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

是枝監督の作品とは相性が良い方だけれど、苦手な韓国が舞台なので、少々期待値を下げての鑑賞。

いやぁ、、じんわりと良かった。
今作でカンヌの最優秀男優賞に輝いたソン・ガンホの演技はさすが!
レビューしていないけれど、"タクシー運転手"での彼は好きだったので、安心して観ていられた。

ベイビー・ブローカー=人身(赤ちゃん)売買というハードな内容を盛り込んだ今作は、きっと日本が舞台だったら、細部の違和感などが雑音になって、ここまで響かなかったかもしれない。

確かにリアル感に欠けた演出が目立つかもしれないけれど、是枝監督が伝えたいのはそこではない。
監督の切り口は、あくまでも親子とは?家族とは?であって、社会の問題提起がメインではないと思う。
よく考えたら犯罪まみれの展開にドン引きしてしまいそうになるけれど笑、善悪を敢えてはっきりさせず、伝えたいメッセージが多方面からじわじわ〜っと来るのはやはり、監督の手腕なんだなぁ。

印象的な洗車のシーン、観覧車のシーン。
からの〜離婚して独り身のサンヒョン(ソン・ガンホ)、孤児院育ちのドンス(カン・ドンウォン)、自らも過酷な生い立ちの捨てられた赤ん坊の母親ソヨン(IU)、孤児院から脱走して来たヘジンの4人(ウソン=赤ん坊も入れて5人かな…)が心を熱くする、"生まれて来てくれてありがとう"のあのシーン。

社会の弾かれ者として常に淋しさと背中合わせ、家族の温もりを持てなかった面々が、淋しさを持ち寄って心を温め合うあのシーン。
ウソンの存在が、彼らの存在までもかけがえのないものだと気づかせてくれる素晴らしいシーン。。

是枝監督が、繰り返し繰り返し描いて来たテーマ。家族とは何か?

人間の弱さ、脆さ、優しさ、逞しさ。
人生の厳しさ、残酷さ、複雑さ、美しさ。
取り返しのつかない、どうしようもない人生の中にも、少しだけ希望が見える瞬間。

それぞれのこれからの人生に幸あれ!と願わずにはいられない。。



是枝節、やはり健在!!
(ちょっぴりファンタジー?)



**皆さん話題にされている授乳のシーンは、、
赤ちゃんが死産でも、体は赤ちゃんを受け入れる準備をしていて、母親は胸が張っておっぱいが出るという悲しい現象があり、個人的には里親になりたいという女性の思いが先行したのかな、と。
赤ちゃんを産んだ人だけが母親なのではなく、赤ちゃんを亡くして代わりの赤ちゃんが欲しいと思ったのも母親。
同じ母親の気持ちに変わりはないのだと、言いたかったのではないかな。それくらいの思いで育ててくれると知ったから、ソヨンはショックだったけど、この人達なら託せると思えたんじゃないかな、と思う。

上手く言えないけれど、赤ちゃんポストの是非とか、誰が悪いとか、無責任だ、とかそんな事よりも、どんな母親も皆母親なんだと、そしてどんな子どもも母親に愛情を求めるものなんだと、そしてそれを自然に支える人達のさりげない優しさ、、そんなことを考えて、胸の奥がキューン、となった。。
(最初とソヨンへの態度が変わっていく女性刑事(ペ・ドゥナ)もきっと過去に自分の母親と何かあったのかもしれない?もしくは自身の子どもと何かあったのかもしれない?けど、敢えてそこは描かれない。どこかしらに、自分と重なる視点があるのではないかな。)


韓国の俳優陣の演技が、とても良かった。韓国映画のハードルが下がったかも♪

音楽も、ピアノの旋律が印象的で自然なのが良かった。


第75回 カンヌ国際映画祭 コンペティション部門正式出品作品。
最優秀男優賞、エキュメニカル審査員賞、ダブル受賞おめでとうございます❗️
あーさん

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