Rocko

ボーイズ・イン・ザ・バンドのRockoのレビュー・感想・評価

3.9
タイトルで男性グループバンドの音楽映画だと思ってはいけません。
ゲイの皆さんが誕生日パーティーで家に集まり、同性愛者を巡る会話から紡ぎ出される問題を描いた言わばLGBTのリアル会話劇です。

初演から50年を迎えた昨年のトニー賞で”演劇リバイバル作品賞“を受賞した作品で舞台のキャストが私好み過ぎて映画化のニュース以降、待ちに待っていた作品。ネトフリ入っててよかった!

映画俳優以上にドラマ俳優で好きだった『ビッグバン☆セオリー』ジム・パーソンズ、『ホワイトカラー』マット・ボマー、『GIRLS』アンドリュー・ラネルズ、『アメリカン・ホラー・ストーリー』ザカリー・クイントなど。監督も舞台版を手掛けたジョー・マンテロがキャストと共に続投。製作には『glee/グリー』などで知られるライアン・マーフィーも加わる。(←個人的に作品の当たり外れが多いので不安でしたが、作品にほぼ影響なし)全て同性愛者を公表し成功を収めている面々なので配役にも説得力があります。

この作品は元々ホモ・セクシュアルの世界を通して、孤独、疎外感、自己嫌悪の情を描く感情ドラマなんですが、今回の映画はまずホームパーティーがオシャレ!
ポンポン飛び交うセリフが可笑しくて、昔よくゲイ友とつるんでいた時の楽しさが蘇りました。男に向かって「Bitch」とか私もよくあいさつ代わりに「ブス」って呼ばれてたり、前の日に野球観に行った話をしかけたら「あんたゲイに野球の話はしちゃいけないって知らないの?」と独自のルールをよく教えられ、映画でもスポーツの話になると嫌そうな顔になっていて「それそれ!」とあれこれ懐かしく感じました。
そういった彼ら(彼女ら?)特有の世界観が前半のパーティーで上手く映し出されていて私には凄く面白かったです。

マット・ボマーの輪から一歩引いたクールでセクシーな役は定着しつつあるのか、ファンの期待に応えてくれているのか、脱いでくれるんか!!!と見入ってしまい字幕が邪魔に。会話劇なのに会話がどうでもよくなるw
前半は会話に乗れない人が観たら全然面白くなくて離脱するほど会話とマット・ボマーの裸体ぐらいしか楽しみ方はないです。

中盤から重いムードになってくるので、ジム・パーソンズも次第にシェルドンには見えなくなって来ます。序盤でつかみにくい関係も段々と明らかになり修羅場へー。
この舞台で言う第二幕の激情は先日NTLiveのオンライン観劇をしたばかりだったので、舞台をそのままの迫力で観たかったなぁ~と思ってしまいました。映像美など魅力がもっとあればよかったんですが、俳優陣の熱演が光るだけに映画では少し物足りなさを感じてしまい、舞台の写真を探してみたらマット・ボマーが美し過ぎる✨
生で観たら息ができる自信がないので映画でよかったのかも。

1968年まだ同性愛をオープンにできなかった時代に公開された劇と同性愛者を「カミングアウト」し成功を収めている俳優たちの努力と勇気を素晴らしく思います。
しかし50年以上経ってもまだ「カミングアウト」が褒められる社会よりもっと性の多様性が理解され、自然に受け入れられる世の中になって欲しいと願います。
まずは「男らしい」「女らしい」の概念を取り払うことから。

●2020年173作目●
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