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シングルマンのkuuのレビュー・感想・評価

シングルマン(2009年製作の映画)
3.7
『シングルマン』
原題A Single Man.
製作年2009年。上映時間

世界的ファッション・デザイナーとして活躍するトム・フォードが長編映画初監督に挑んだ。
因みに
トムフォードがドメニコ・デソーレ氏と一緒に設けたのがトムフォード社で人気アイテムといえば、サングラス、スーツ、ネクタイ。
彼は、元々グッチやイヴ・サンローランで働いていたデザイナーやったけど、グッチのファッションの路線を変更し、クラシック系からモード系にするようにして業績上がったんじゃないかな。
その彼が、1964年に発表されたクリストファー・イシャーウッドの同名小説を原作に、長年のパートナーを亡くした50代のゲイの英国人大学教授の愛と葛藤を描き出す米国製作品。
コリン・ファースが主人公を繊細に演じ、共演にジュリアン・ムーア、マシュー・グードほか。

1962年11月30日。8か月前に愛する人を失ったジョージ(コリン・ファース)は、この日で人生を終わらせようと、死の準備を着々と整えていた。
ところが大学での講義は熱を帯び、いつもならうっとうしい隣の少女との会話に喜びを抱く。
そして遺書を書き上げたジョージに、かつての恋人チャーリー(ジュリアン・ムーア)から電話が入り。。。

ホンマ皮肉的なタイトル
映画『A Single Man』。
主人公のジョージ・ファルコナー(コリン・ファース)は、16年間連れ添ったパートナー(マシュー・グード)を交通事故で亡くしたばかりのゲイの大学教授。
恋人の両親はジョージが追悼式に出席することを許さず、ジョージは何事もなかったかのように、つまり、無関心な運命の軽率な残酷さによって心が引き裂かれていないかのように歩む。ジョージは、長年の女友達であるチャーリー(ジュリアン・ムーア)に自分のことを正直に打ち明ける。チャーリーは、ジョージの同性愛を受け入れてくれるけど、彼自身の葛藤が二人の関係を大きく複雑にしてく。
とは云え、ジョージ自身も葛藤を抱えており、絶望のどん底にいるとき若い男子学生(ニコラス・ホルト)が彼にロマンチックな誘いをかけ始めた。
トム・フォードは、監督デビュー作となる本作品において、24時間という時間の流れの中で起こる物語を、厳密に直線的で分かりやすい方法で語るのではなく、
強烈なクローズアップ、
視覚的な色合い、
声優によるナレーション、
夢のシークエンス、
フラッシュバック、
記憶、
想像、
そして、ゆっくりと、
しかし容赦なく過ぎていく時間を意味する、時を刻む時計の終わりのないイメージを多用することで、物語に断片的で別世界のような質を与えてる。
しかし、このようなアプローチは、時に印象的ではあるものの、いくつかのリスクを伴う。
芸術性がしばしば距離を置く装置として機能し、主人公の心や感情に十分に入り込むことができないから。
とは云え、このスタイルは、ジョージが社会から強いられている秘密と抑圧の生活に、興味深い視覚的な相関関係をもたらしている。
この社会は、まだその時点では、自分たちが無限の知恵をもって受け入れられるものや普通のものと規定したパラメーターを脅かすような人を受け入れる準備ができていない(以前は今以上に)。
奇妙なことに、ファースの重い英国訛り、独特の深い色調の内装と空気のない外見によりも今作品はロサンゼルスを舞台にした映画の中で、実際にロサンゼルスで行われていることを感じさせない数少ない映画のひとつかな。
実際、今作品は東海岸や旧世界のヨーロッパの香りがして、見る者を混乱させる働きをしている。
俳優としてのコリン・ファースは、外面的な行動が心の奥底で起きていることの盾になっているような男を演じ、これほどまでに目的意識の強さと繊細なテクを見せたことはない。
ファースは、真の愛を失った悲劇的な状況と、他人の感性を害さないように一生仮面舞踏会を続けなければならないという重圧の両方に対処する男を演じながら、ランダムな表情と控えめなジェスチャーで豊富な意味を伝えています。
背景にはキューバのミサイル危機があり、関係者の生活や将来に暗い影を落としてる。
せや、ジョージの極めて特殊でありながら普遍的な物語を通して、今作品は、他人に偽り、自分に偽りのない人生を送ることの悲劇を、感動的に伝えているかな。
まだ、完成形じゃないかもしれへんけど、善き作品でした。
kuu

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