荒廃して変容した地球を舞台に繰り広げられる青春ロードムービー。
シリアスな舞台だけどロマンスに主眼を置いた潔さが爽快で、程よいコメディ感もあって気軽に観られるポップさが魅力的な佳作。
全年齢向けの安心設計なので本格的なモンスターパニック映画を期待する人には向いていないけれど、ステイホームにおいて家族で楽しむ映画としては最適。
今作ならではと言えるようなポイントはそんなに無いけれど、シンプルながらもよく練られた脚本と個性的で魅力的なキャラ設定、そして気持ち悪いけどどこか愛らしいモンスターの造形がなかなか楽しくて、娯楽作として申し分ない。
前半はちょっともたつくようなテンポの悪さが気になるけど、バディとなる犬との合流からどんどん加速していき、出会いと別れを繰り返しながら、情けなかったジョエル(ディラン・オブライエン)がだんだんと成長していく様は痛快で微かに感動的ですらある。
モンスターも単純悪ではなく、食物連鎖の摂理に則った構造なのもよくって、自然の美しさと残酷さについても俯瞰的な態度で接しているのも気持ちが良い。ある意味では発達し過ぎた人間至上主義の現代社会に対する警鐘のようにも見える作りが巧妙だ。
コロナ禍じゃなければシネコンでヒットも狙えそうな作品。Netflixオリジナルのクオリティの高さに舌を巻く。