新潟の映画野郎らりほう

サマーフィルムにのっての新潟の映画野郎らりほうのレビュー・感想・評価

サマーフィルムにのって(2020年製作の映画)
3.7
【夏が逝く ~サマーフィルムにのって~】


殺陣は勿論の事、日常生活上の些細な所作行動迄もが 既に勝新太郎を想起させて止まない主人公ハダシ(伊藤万理華)。

特に(劇中劇撮影場面での)凛太郎(金子大地)が連呼する『左様なら』に対し、『カット、カット、カット』を連呼し 眉間に皺を寄せ 眼を瞑るハダシの相貌は正に勝新のそれである。

その場面の両者はテンポの良いカットバックで捉えられており、その“切り返し”に“剣戟”的妙趣を感取する(映画用法“カット”が“斬る”のダブルミーニングである事は論を俟つまい)。
と同時に、二人が“最期に切り返し合うであろう事”を予期/覚悟する。


カットバック/斬り合い続ければ 映画は何時までも続く。然し、ラストカット/決着をつければ その時点で映画は終わるのだ。

切り返しの終りを/映画が完成する事を希求しながら、同時に 終らない事/完結しない事を切望する私がいた。

剣戟の終りが映画(撮影)の終りを意味するのは勿論だが、同時に もう一つ、彼等の夏(青瞬と言い換えてもいい)もその瞬間に終る事を悟る。
何故なら、“完成”とは大人への成長であり 幼年期との訣別《左様なら》であるからだ。




体育館床に車座で座り談笑する少女達の姿が、下方のランタン燈色照明に依って温かく浮かび上がる。
キャメラは緩やかに彼女達周辺を旋回し その愉しげな表情を捉え、今この瞬間が 代え難き時である事を告げる―。



夏が逝く…サマーフィルムにのって…。

サヨウナラ…。




《劇場観賞》