るるびっち

オールドのるるびっちのレビュー・感想・評価

オールド(2021年製作の映画)
3.3
シャマラン映画は、喜劇的要素が含まれている。
『ミスター・ガラス』の奇人変人大集合。
『サイン』宇宙人にケツバット。
『ヴィジット』のパンパース攻撃。
奇妙な笑いに満ちている。
今回は子供たちが初潮と夢精を飛び越え、いきなり妊娠する。
老化に関しては笑える部分も多いが、直接的な笑いは取らない。
夫を見る度、髪の毛が後退していて、気づけば波平状態とか。
キスしたら、いつのまにか入れ歯になってた(いつ作った‼)。
みたいなギャグは、さすがにしない。
それでも毎度ヘンテコなので、本当はコント作家ではないかと疑っている。

人生は長いようで短い。
一度道を間違えると、中々引き返せない。
むしろ益々迷い込んでしまう。
シャマランも『シックス・センス』のヒットから、それを超える驚きを期待されていた時期があっただろう。
それが彼の映画人生にとって良かったか否か?
もっと普通の映画監督として、活躍することもできたのではないか?
そんな思いもあってか、『エアベンダー』や『アフター・アース』のようないかにもハリウッドな映画を作った。しかし結局、自分の作りたいものではないということか、またこの道に戻ってきた。
餅は餅屋、シャマランはシャマランなのである。

とはいえ、ツイストやオチで一発ホームランという邪念は無くなったのかも知れない。
今回のオチは手堅い。
驚かせるより、人間の欲望とか企業の暗部みたいなものを持ってきた方がテーマとしては落とし込みやすい。
シャマラン自身も老練になってきた。正にオールド。

喧嘩していた夫婦が、互いに老眼や加齢性難聴で相手とコミュニケーションをとるところが微笑ましい。
老人漫才コンビ『ナンセンス』みたいだ(痴呆症と耳が遠いコンビで、ネタを忘れても相方は話を聞いておらず空回りする、ワザとではなくマジなのが凄い😳)。
互いに歳をとったからこそのいたわりがある。
夫婦だけでなく、子供たちにも家族だけでの成人式や卒業式をやってあげたら時間を深く描けただろう。もっとしみじみ泣ける映画になったに違いない。

人生は短い。この映画ではたった1日で50年過ぎてしまう。けれども我々も、映画を観ている2時間分確実に歳をとっているのである。
一秒一秒大切にしてなくてはいけない。
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