ゲイの子がまだ偏見のある世界でドラーグクイーンを目指して人生を切り開く映画。
生きにくい社会でありのままの自分を!っていう最近の流行りの主張の映画。
映画は全体的にシーンの運びがおおざっぱ。
「ここは傷つくところ」「ここは盛り上げるところ」っていちいち監督の声が聞こえてくる感じでメッセージが単調、かつ、どこかで見た演出の繋ぎ合わせ感があったし、さあここで泣いて!って言われるとむしろ冷める私にはきつかった。
演出が古いのと、どうしてもだめだったのが主人公の身勝手さ。
主人公は自分を表現したいあまり、友達を利用したり、母親に酷いことを言ったり、自分中心的な理由で学校の規則を守ろうとしない。
「自分を表現するためなら他人なんか気にしなくていい!」ってのをまさに体現してたわけだけど、私は本当にイラついた。
それでも主人公の周囲の人間は常に「あなたはあなたのままでいいの」と歯の浮くようなセリフを言う。
どんだけ甘やかしてんだろう。そうやって周囲から大目に見てもらっている環境で主人公は意気揚々と我を通す。
たとえば自分で描いた眉毛に失敗して、誰か助けて!って騒ぐシーン。
助けを求めた友達は翌日にものすごく大事な試験が控えていて勉強をしなければいけないのに、主人公は「助けて!!友達でしょ!」の一点張り。
たかが眉で友達の人生を邪魔しにいく主人公。もうこいつ死ねばいいのにと私は思った。
息子のためを思って優しい嘘をついていた母親に対する言葉も酷かった。
「ママは何者にもなれなかったから綺麗なアタシに期待してるだけでしょ!」
母親は年老いて太ったシングルマザー。(まだ別れていないだけで実質シングル)息子がゲイであることもすべて理解してくれて、主人公が幼い頃に赤い靴をくれた優しい母。
その人に対して「派手な人生ひとつ送れなかったダメな奴」と罵倒……。
何者どころかお前の「母親」を見事にやりきってきたじゃないか!!!
なんだこいつ!!!!(怒)
他にも、普通の感覚ならそんなことしないというエピソードがちらほら。孔雀の羽を睫毛につけて学校に行ったり、スポーツのユニフォームをドレスみたいに体にまとうなど。
そりゃ先生にも怒られるし、同級生に殴られもするでしょうね。それでも主人公は被害者ぶって反省しない。
自分を表現するためなら他人に迷惑をかけるのが当たり前だと思っているのがトランスジェンダーとディスる映画なら大成功じゃないかな。
曲は良かったけど、歌唱力がいまいちだったし、こんな勝手な主人公、殴り倒されるの当たり前と思えて無理だった。
もう一回観るかといわれたら観ないと答える。もちろん他人にも勧めない。