たけのこれんこん

竜とそばかすの姫のたけのこれんこんのネタバレレビュー・内容・結末

竜とそばかすの姫(2021年製作の映画)
1.3

このレビューはネタバレを含みます

まず素人が一曲歌っただけで億バズとかしない。
まるで目立ちたくてしょうがない監督自身の願望に見えて寒かった。
プロの脚本家をたてろと散々批判されているのに、監督自身が書くのは、自分がこんな風に目立ちたいからかな?と。

まあいいや、バズったとしましょう、辺鄙な場所に住む女の子がネット空間では歌えるようになって良かったね。
うんうんそれで?
私はてっきり、歌えなくなった女の子がネットを通じて歌えるようになり、見守ってくれていた優しい人達に気付いてトラウマを乗り越える物語だと思ってた。
ところが歌だけでなく、母を亡くしたトラウマ、学校内ヒエラルキー、友情、恋愛、虐待、美女と野獣、ネット空間……ごちゃごちゃとうるさい。
ここ(ネット)なら自分が出せる!と存在価値を感じ始めたところでとつぜん竜を気にし始める主人公。
コンサートを邪魔してきた怪物に対して「あなたは誰?」と主人公が執拗に気にする気持ちが私にはわからない。主人公の孤独と惹きあうものがあるならそこをもっと描写すべきだったと思う。
ネット空間で歌うことと竜の正体を探すことがかみ合ってないため、「歌が評判になった!」→「竜を助けたい!」が強引すぎて意味がわからない。
見ているこちらとしては主人公がどうしたいのか、次に何をすべきなのか予測ができない。置いてけぼりのまま美女と野獣そっくりなダンスシーンなど見せられても感動は薄い。
世界中が竜を憎む理由もわからんし、世界中が竜を探してるとき、これまた理由もなく主人公が一番最初に見つけるのも都合が良すぎる。集中できないから粗ばかり見てしまう。

「竜に信用されるためにネットの世界で正体を明かして歌え」も酷い。心配してくれていた幼馴染の言葉とも思えない。ネットに素顔を晒すのがどれだけ危険か知らないのかな。

そして強引なラスト。このアニメは本当に純粋に脚本が酷い。
なぜか主人公がベルだと知っている大人たちが不自然にギャラリーやってんのはよしとしても、虐待野郎の元へ女子高生をひとりで向かわせるのはマジで意味がわからない。
しかも手がかりが「窓から見えるツインタワー」しかない!土地勘もない街をひとりで走って探すって……バカなの?どんだけ家があると思ってる?
家主が鍵を閉めればその時点で終わり。無理に入ったら不法侵入だよ…と呆れていたら、まさかの公道でばったり出会うとは!都合よすぎてさらに呆れた。

極めつけ、呆れ通り越して怒りすら感じたのが、「未成年女子に睨まれただけで腰を抜かす虐待親」。そんなのいるか!!!
この監督は虐待を何も知らない、というより真面目に描く気がない。
虐待は依存と中毒。する側はそれを虐待と思ってないし、気付いても本人の意思では止められないくらい根が深かったりもする。学生が睨んだくらいでどうにもならない。被害者が「戦うよ」と心を決めたところで殺された例などいくらでもある。
虐待することに慣れた親なら巧妙に隠すことも知らないのか。客を丁重に帰してから子供を半殺しにするくらいしてもおかしくないのに。
虐待の内容も花瓶ガシャーンと背中のアザだけ…ってもうここで突っ込むのも面倒だから、監督はさっさと歌と竜探しが繋がってないことに気づくべきだった。あと、物語すすめるのに便利なアイテムとして虐待を扱うな。腹立つから。

弟を守りながら暴力を受けて、ちょっとかばわれたら「僕も戦うよ」なんていう純朴な青年が、世界中に嫌われた竜の正体と言われてもピンとこないし…。
ていうか、探し求めた相手が日本国内にいたんなら世界規模の話にしなくてよかったのでは。
学校内のヒエラルキーを描いてた前半のノリで最後まで、学校内もしくはサークル内くらいの規模で話をまとめればよかったのに。
細田監督は世界規模の話を作るのに向いてないと思う。もう底が見えてる。
脚本は他の人が書いた方がいい。
映像と音楽は良かった。