たけのこれんこん

アバター:ウェイ・オブ・ウォーターのたけのこれんこんのネタバレレビュー・内容・結末

3.0

このレビューはネタバレを含みます

この映像はジェームズキャメロンにしか作れなかった。
「映画史に残るヒットをした1作目の続編」としてここまで作りこめたのは本当にすごい。
聞けば1分に数億円かかっているとか。それだけ予算をかけた映像になんの感情もわかないはずがない。

家族を軸に、ジェンダーや混血が裏テーマにあったのが面白かった。
心も体もナヴィになりきった主人公 VS 身体はナヴィだが心は人間のままの黒幕。
そこに「人間とナヴィのハーフ」の養女キリと、「ナヴィの心をもった人間」養子スパイダー。
森の一族から海の一族にならねばならなかった妻ネイティリ、長男ネテヤム、次男ロアム、末っ子トゥク。
全員がそれぞれジェンダーのズレを抱えつつ、新しい環境と出会いの中で成長していく。
……映像もさることながらこれだけ盛り込んだ設定を3時間にまとめつつ、続編につなげる監督の手腕はやっぱりすごい。

パンドラの海の美しさ、トゥルクン(鯨)の可愛さ、海の一族の風習、捕鯨船のえげつなさ、迫力のある戦い、突如出てくるタイタニック(笑)……これでもかと目を引くシーンの連続。さすがです。


でもね?
どうしても前作より弱いです。
まず3時間もかけて長々と説明しなければならない時点で前作を越えられてないじゃん…。
私はトルークマクトが見たかった!家長の役目をかぶせられて子供を理解してあげない残念な父親なんかじゃなく。
もっとこう、平凡な主人公が英雄になるまでを描いた前作くらい、シンプルでわかりやすい熱い物語が欲しかった。
ジェイクは家族守るために遠くの海へ逃げる選択をしたけれど、私には『1作目は森、2作目も森じゃ絵がもたないから今回は海が良いと判断した』という監督の声しか聞こえなかった。トルークマクトがビジネス上の理由によりオミットされたの残念すぎる。

途中、綺麗な海の映像が連続するあたり、いかにも見てくださいって感じで眠かった。
どんだけ綺麗でも海は海。見たことあるし想像もつく。たいしたシナリオもなくただ海見せられてもな~……。
そういうシーンで必ず流れるテーマ曲も安直だった。
前作でテーマ曲が使われたのは1回だけ。浮島の間を飛び回る飛竜のシーンのみ。そこは主人公とネイティリが精神的にも風習的にも近づいたクライマックス感があってテーマ曲がめちゃくちゃ合ってた。
今回はとりあえず自然が綺麗だから流しとくかって感じ。

捕鯨船のえげつない描写はいかにも日本の捕鯨をモデルにしてる雰囲気が嫌だったし、「完全な悪」に描かれすぎていて監督のバランス感覚が崩れてきてるのを感じた。(日本の捕鯨は脂も革も骨も全て利用していたと聞くからナヴィ族に考えが近いと思う)
人間は殺したトゥルクンの脳髄しか使わないのではなく、脳髄も使うけど骨や肉も再利用しているって設定のほうが現代人らしいし、そのほうがどっちの立場もわかるなぁって深みが増したのに。
監督のバランス感覚の崩れは養女キリがエイワの力を簡単に使うシーンでも感じた。ナヴィ族が崇めてきた神秘の力をハーフだからという理由で自分のために使える設定……考え方が白人すぎません?
エイワって人間の都合には全く関係ない自然(惑星)そのものの象徴でしたよね?
畏怖や信仰の対象である惑星のエネルギーを自分のために使える設定はエゴの塊でしかない。
たかが一人のナヴィがエイワの力を使役するたびにアバター1まで貶めていると感じるからマジで使わないで欲しい。

クライマックスで出てきたタイタニックも若干余計だった気がする…。あのシーンはパンドラの話でなく、ただのアクション映画の作りだったからアバターに似合ってない。
対立構造も前作は「地球軍VSパンドラ」だったのに対し、今作は「粘着男VS海一族」に小さくなってしまった。解像度を上げて複雑なドラマにしたかったんだろうけど……うーん。
スパイダーとクオリッチがどうなるかは知りたいけど3作目はもっと間延びしそうで不安。あとキリが神の力使いまくりでうんざりさせられそう。

やっぱり1作目が原点にして最高。
あの1作目の続編をここまで作れるのはキャメロン監督しかいない、でもアバターに続編は必要なかった。が私の感想。