たけのこれんこん

映画 えんとつ町のプペルのたけのこれんこんのネタバレレビュー・内容・結末

映画 えんとつ町のプペル(2020年製作の映画)
1.2

このレビューはネタバレを含みます

貧しいが夢を追う少年と、その少年が出会ったゴミ人間の物語。

登場人物の生い立ちや、背景にある文化、各シーンの前後の繋がりなどがいちいち見えてしまう大人には向かない映画だと思った。
異端審問官(他教を排除するための司法職や捜査員)がいるのにハロウィン(キリス…教にとってもともと異教徒の祭り)は堂々とあるし、星がない世界なのに「星読み」という職業もある。

どの登場人物も口を開けば「星なんかあるわけないだろ!バカかよ!」「ゴミ人間がいるから街が汚れるんだ」と主人公をいじめてくる。
それぞれ年齢や立場、主人公との距離も違うんだから、もっと主人公をかばう人や、理解はしてくれるけど人目を気にして嫌うふりをする人、好悪なんかどっちでもいい人などいればいいのに。
ついでに服装仕草セリフでキャラ性の違いをわからせてくれるような技もなく、どいつもこいつも主人公を虐げる言葉(作者が言わせたい言葉)を言うだけのスピーカーみたいだった。

私が一番薄っぺらいと感じたのが、町のいたるところ違法建築ばりの狭い通路と細かい段差があるのに、貧しい主人公の家に車いすの母親がいるところ。
こんな街で車いすのシングルマザーの生活って…?
幼い子の収入を頼りにしていて申し訳ないから自分も頑張ってますとか、車いすでも出来る職を探しましたとか、車いすで行ける道しか知りませんとか、そういう生活感や滲み出る性格、説得力が一切ない。
車いす=主人公に味方してくれる母まで社会的弱者、という属性のために出された感じが不快。

「みんなに蔑まれながらも少年は父の遺言を証明すべく、星を探すための船を作る…!」
このアニメにはそれしかない。尺を使って深堀りしてもあらすじ以上の情報が出てこない。
純粋な少年が星を見たいというだけで蔑まれる理由も、ゴミの塊が動いたというだけで社会全体で抹消しようとする理由もわからないまま、主人公が社会からはじかれる構図だけ延々と見せられる。
作者と監督がとにかく主人公を可哀想にしたいことだけはよくわかった。

そして最後には、個人的に苦手な「世界中の人が見守る中で大演説をぶちかまして、みんなが心を入れ替える」場面があった…。
「夢を追ってなにが悪い!」と主人公が叫んだだけでコロっと改心しちゃうんですよ、それまで口をそろえて非難してきた人たちが。
世界中の人が固唾をのんで見つめる中、車いすの母親が立ち上がって「あんたは間違っちゃいないよ! あんたの父親はねぇ! バカ正直でどうしようもなかったけど嘘がつける人間じゃない!」と一家庭の父親の紹介までするという……。
なにこの茶番。
恥ずかしかった…。