にくそん

マリアの旅のにくそんのレビュー・感想・評価

マリアの旅(2020年製作の映画)
3.7
70代の堅実な女性があることをきっかけに一人旅をする。観光地でもない見知らぬ町をシニアが訪れる話なので思うようにいかないことも多いんだけど、それも含め、旅にしかない特別な瞬間が美しく切り取られていて、わりと好きな映画だった。

夫からの着信を全部スルーしたり、現地で宿を探したり、知らない人と話したり、タバコを吸ったり、バイクの後ろに乗せてもらったり、、ダンスに興じたり、水着の用意もなしに海へ入ったり。普段の自分を捨てられる解放感と心もとなさの両方がある旅。こんなのをおばあちゃんになってもできたら素敵だよなあ、と少し夢を見させてもらった。旅にありがちな冴えないトラブルまでが今は恋しいような。

マリアが訪ねるのは、塩の精製ぐらいしか産業がない上に、その製塩工場が自動化されたために雇用が激減して、すっかりさびれた町なんだけど、旅の舞台としては悪くなかったのかもしれない。人恋しいバーの店主がいたり、予約なしに借りられるゲストハウスがあったりで。町の名産は塩といちじく。途中、それっぽい木が登場するけど、いちじくの実が私の知ってるのよりだいぶ大きい。あれ、いちじくじゃないのかな。

カメラワークにまあまあクセがある。例えば、踊ってみることを数秒かけて決めるマリアの顔がその間ずっとアップになっていたりして面白かった。

世代の異なる2人のスペイン人女性が交流する映画だと思っていたので、そこはちょっと肩すかし。ヴェロニカを演じたアンナ・カスティーリョが美形だし存在感もあったけど、やっぱり邦題の通り、旅の映画だったと思う。
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