とりん

アムステルダムのとりんのレビュー・感想・評価

アムステルダム(2022年製作の映画)
4.0
2022年93本目(映画館44本目)

第一次世界大戦の兵であるバート、ハロルドと友人であるヴァレリーがある巨大な陰謀に巻き込まれていく話を描いた事実を基にした話。
こういった陰謀論を描いた話は重厚な作品も多くあるけど、本作は小気味良く描かれているので、そこまで重たくなく、コミカルな要素も含めているものの軽すぎず良い塩梅で作り上げられている。
ストーリーとしてもこういったタイプの作品は割り好きだし、テンポ感が良いからどんどんのめり込んでいってしまう。黒幕は誰なのかとか次はどう展開してくるのとか考えるのは好きだ。

1930年のニューヨークを舞台としており、その背景やファッションなども注目しておくポイントだし、戦友会で歌われる歌なども中身のない歌詞だったり、聴いていて気持ちの良いノリやすい曲だったりする。
でも本作の1番の見どころはやはり俳優陣の演技だろう。
主役のバート演じるクリスチャン・ベイルの役作りは本作でも見事。自身も戦争で傷つき、片目を失っても、自分の本業である医師の仕事を続け、他の病院では不当な扱いをさせられた戦友たちの治療にあたっていた。
同じく戦友でかけがえのない友人でもあるハロルドを演じたのは「TENET」でも注目を集めたジョン・デビット・ワシントン、彼も不当な扱いを受ける戦友たちの味方となるために弁護士としてみなを助けていた。また特別とりあげられはしないものの時折見せるこの時代の黒人差別の強さも本作では描かれており、そういった逆境にも負けずに自分の意志をしっかり出す役を演じきっていた。
そして傷ついた2人を戦地で助け、その後アムステルダムで共に過ごしてかけがえのない友人となるヴァレリー演じるマーゴット・ロビー。アムステルダムの時の自由さとアメリカで再開した時の弱々しさのギャップも見事だったし、彼女自身も芯の強い女性で、弱った身体をものともせず前へと出ていく様がカッコよかったなぁ。彼女もスクリーン映えする女優だなと改めて思った。

本作を観るキッカケともなったのはメインの3人のポスターであり、あらすじ程度しか確認してなかったので次から次にこの人もこの人も出てくるのって感じで驚きがいっぱいだった。
ラミ・マレック、アニャ・テイラー・ジョイ、ゾーイ・サルダナ、クリス・ロックに加え、ロバート・デニーロまで出てきた時は圧倒された。将軍の名にふさわしい堂々とした演技でした。他にも出番はそこまで多くないがテイラー・スウィフトも出てたりするのも注目どころ。
これだけの俳優陣の演技を観るだけでも十分な作品だった。でもこのテンポ感が自分にはすごくハマったし、良い作品だったなと。この構成力はデビット・O・ラッセル監督の手腕だなぁ。観逃してた「アメリカン・ハッセル」も観ておきたい。

こういう陰謀論は常にあるものではあるし、本作もどこまでかはわからないが事実を基にしているので、本当にこういう陰謀を企てていた組織があったのは間違いないのだろう。それぞれがそれぞれの想いがあるにしろ、世界征服っていうのはなかなか漫画チックではあるけど、ナチスのヒトラー然りやりかねない人は大いにいるだろう。実際本作も予想通りヒトラー絡みだったし。
陰謀の真実を明かしていく話ではあるものの、スパイやサスペンス的な要素はそこまでなく、あくまで過去軍役に勤めた人たちが巻き込まれたという部分が前提にあるので、そこが惹きつけられるポイントにとなったかも。
とりん

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