この作品を好きになれたのは
村上春樹の原作にはないパーツ「演劇」という世界観が組み込まれ
多角的な面が物語に構成されたことにより
原作の世界観をより深く
登場人物たちが人間臭く
彼らの息遣いを感じられたから…、かもしれない
キーワードにすぎなかった
「チェーホフ」を掘り下げた濱口監督の差配は
お見事だったと記憶しておこうと思う
推察するに…村上春樹らしい世界観を感じたのは
冒頭30~40分くらい、だろうか
そこを超えると、閉じていた世界が徐々に広がり始め
濱口竜介監督の「ドライブ・マイ・カー」へと
変容していく様が面白くなり
スクリーンから目が離せなくなって
一気にラストシーンまで持って行かれてしまった感がある
映像も 落ち着いた透明感があって
日本の広島の風景が映し出されているのに
どこか大陸的雰囲気が漂う不思議な感じ
大林監督とはまた違う「広島」を映した濱口さん
今回のロケで知った呉市の船宿に環境局の中工場のエコリアムには
いつか行ってみたい
主演の西島さんや
ドライバー役の三浦さん等の好演はもちろんなんだけれど
高槻役を演じた岡田将生氏の際立った存在感はなかなかのもの
物語に緊張感を与える役を的確に演じきる…お見事
そして、もう一人
本作における聾唖者イ・ユナの存在意味の尊さを体現し
真摯に演じたパク・ユリム氏の演技は演じた役に留まらず
「ワーニャ伯父さん」の演劇パートで演じたソーニャ役の演技も秀逸で
思わず涙してしまった
正直…村上春樹の映像作品で
アカデミックな映像シーンが登場するとは夢にも思わず
ちょっと得した気分になったと同時に
是非、この演出での「ワーニャ伯父さん」を観てみたいと思ったし
この作品も 機会があれば何回か見直したいとも思う
今後の濱口監督の作品が楽しみだ