むらさきの月

マルモイ ことばあつめのむらさきの月のレビュー・感想・評価

マルモイ ことばあつめ(2018年製作の映画)
4.2
統治目的の為に 他の国の尊厳を軽んじる愚かな行為は
自国民に対しても 容易に向けられることは想像できる
時は流れ 時代と場所が変わっても だ

シネマート新宿にて「マルモイーことばあつめ」鑑賞

ちょっと違和感あるけど
この作品を大まかに例えるなら…韓国版「舟を編む」、かな
苦労の末に辞書が出来上がりました、で終わった物語だったろうに
韓国版の物語の背景に日本統治時代が重なることで
日本の「舟を編む」とはまた趣がガラッと変わって
「言葉」とは 
「自国の言葉」とは何かを
あらためて 考えさせられたと同時に
国の文化や精神性を守ってくれるのは
国というシステムでなく 
その国の人間なんだというコトを改めて実感

今回は脚本も良かったけど 
総ての役のキャスティングが、ホント素晴らしかった!
ユン・ゲサン氏とユ・へジン氏を中心にした
隠密辞書作成チームの絶妙な演技にグイグイと物語に惹きこまれ
辞書作成を阻止しようと頑張る日本の警官たちの
素晴らしい日本語の演技に手に汗握らされ
笑って 泣いて 鑑賞後の気持ちもサッパリ
こうやって辞書をつくり上げた人たちの居る国なのだから
今後の困難にも このバイタリティで立ち向かっていくに違いない

本作の ユ・へジン氏の存在は大きい
字の読めないパンスという役柄
物語が進行していく中で文字が読めるようになり
広がっていく世界観から影響を受けて変化していく心象風景を
違和感なく自然に演じきっている
この安定した演技力には 毎回目を奪われ楽しませてくれる
町中の看板を 指さしながら楽しそうに読み歩く姿
本が読めるようになって「運のいい日」の主人公の境遇に号泣する姿
彼が演じたパンスの姿を観て 猛烈に内省
普通のことが 何故普通なのか
字が普通に読めることということがどういうことなのかをとっても
これからは「普通」という現象も時折り考えていこうと思う

日本人が観るには 少し辛いシーンが多いけれど
日本の劇場で鑑賞出来て良かったと思っている
コロナ禍の影響でなかなか劇場に足を運べずにいたが
面白いシーンへの笑い声
悲しいシーンでは 鼻をすする音
劇場で観ているからこそ 共有できる感情の音が聴こえてくる
劇場という空間は やっぱり心地いい
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