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日本独立のbluestarのレビュー・感想・評価

日本独立(2020年製作の映画)
3.0
8月にはまた今年もGAOで戦争映画をいくつも公開しているだろうとみたところ、この映画が観れるようでしたので、早速視聴。

白洲次郎のことは、数冊の伝記、2度のドラマ化、夫妻が住んでいた鶴川の茅葺き屋根の家「武相荘」の見学などを通して関心があり、GHQの占領下に関しては本「マッカーサーの2000日」や映画「終戦のエンペラー」を始め見聞きしていて、こちらも関心があったのに、これまで知らなかった映画だったことに自分としては何で?いつの映画?と、ちょっと驚いたので調べたところ2020年12月公開でした。新型コロナ流行直前の公開でした。

しかも、キャストが小林薫、浅野忠信、宮沢りえ他、かなり好きなキャストだったのに、知らなかったのは更にビックリでしたが、見終えて見ると、何やら釈然としない内容でした。

何故か。
それは、白洲と吉田の活躍の描写が弱い、映像表現が古臭い(監督は80代の方だからなぁ)のもありますが、右寄り保守(?)層が喜びそうな、「現憲法は押し付けられたもので、日本人としては何としても作り直さなければならない」という意思を明確に感じる内容だから。

改正憲法が進駐軍からの押し付けで、新憲法施行に関し、永井荷風1人の書き残した言葉を引用して「笑う」と言い退けた部分を使っていたのにはちょっと唖然としました。
違う受け取り方をした日本人だって多く居たでしょうに…。
多分監督が荷風の考えに共感したからこの一箇所を取り上げたんでしょうね。
故安倍元首相も過去に「みっともない憲法」とインタビューで答えていたのを思い出しました。

そして更には、何故か「戦艦大和の最期」という作品がGHQの検閲で占領期間に公表されなかったということがこの作品の2軸目位にフォーカスされているのが微妙。
あれ、この映画は白洲と吉田の活躍の話だったのではなかったのかと。
これも右寄りな方々が喜びそうな部分です。
白洲次郎がこの大和の原稿を読みながら泣いた描写がありましたが、そこまでして「戦艦大和の最期」という作品に思い入れが有った伊藤俊也監督兼脚本の意思なのでしょうね。
1本の映画にねじ込むには、話があちこちに飛び、微妙な感じでした。

むしろ、白洲次郎が従順ならざる唯一の日本人と言わしめた活躍振りを、もっとしっかり見せて欲しかったです。
強がる部分はむしろアメリカ人相手に日本語でドヤした部分位で、残念過ぎました。
調印式での日本語でのスピーチ部分の短い切り取り部分も、とても意図的に感じました。

憲法の人権部分に関して、特に女性の人権内容に関わったシロタ・ベアテさんについては、触れられていたものの、エンドクレジットには役名と共には出て来ず、なんで??と思わざるを得ない何かの力を感じてしまいました。

伊藤監督は、この作品以前に、東條英樹を主役にした映画を撮ったようで、戦犯を英雄視していると国内外から問題視されたようですが、これについては、観ていないので何とも言えませんが、東條をありのまま映画にするにしても、それを美化しているか、批判的に捉えているかは、やはり監督の考えが映画に滲み出るものを観客は感じ取るわけで、やっぱりそういう主張をする人々にウケる内容になっているのだろうなと。

映画には微妙なモヤモヤが残りましたが、
小林薫は、役作りでかなり吉田に寄せていてビックリでしたし、吉田のユーモア精神と先見性とどっしりした貫禄はよく出ていました。

浅野忠信は、英国仕立ての伊達男の白洲には及ばないですが、悪くない演技でした。
白洲を語るなら、白Tとジーンズ姿も見せて欲しかったです。日本人で初めてジーンズを履きこなした男と言われていますしね。

宮沢りえも、癖のある正子キャラは出ず、白洲を支える良妻の部分だけだったので、少し役不足で勿体なかった気がします。

シロタさんの扱いとか、あんまり女性が活躍するのを面白くないと思っている人たちが作ってるのだろうな。

出演者達は、出来上がった映画を観てどう思ったのか聞いてみたいです。
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