サラリーマン岡崎

キャラクターのサラリーマン岡崎のレビュー・感想・評価

キャラクター(2021年製作の映画)
4.3
『セブン』的なサイコパスの話でありつつ、日本のポップさを調和させた感じが新しくて、上手くいっていたと思う。
監督誰かな?と思ったら、永井聡!
昔はCM出身という感じが滲み出すぎて、作品性と上手くマッチしてなかったのが好きじゃなかったけど、
前作の『恋は雨上がりのように』が日本のCMの良さを調和させて、
とてつもなく良作に仕上げてきてたので、今回もなるほどとても上手くいっている!

やはり一番上手くいっているのは、菅田将暉とFukaseの取り合わせだと思う。
永井監督は前作でも大泉洋と小松菜奈の使い方をとても上手くやっていたけれども、
日本カルチャーの最前線にいる二人にマンガという日本の代表的なポップカルチャーを土台とした作品に出させることで、
最大限に「日本のカルチャー感」が醸成される。
クリエイティビティ溢れる二人だからこそ、狂気性溢れるキャラクターもとても似合う。
CMでブランドに合うタレントを提案するように、
やはり俳優の良さを考えてキャスティングできているのは永井監督の手腕だと思う。

そして、良い意味で「軽さ」がある。
CMは短い時間の中で訴求をしなければいけないので、テンポの良さは大事である。
今回は世間を騒がす狂気殺人ではあるが、特に世間が騒いでいる光景などは映されず、
基本登場人物の中だけにフォーカスされ、意外とこじんまりした印象を受ける。
でも、ハリウッド超大作みたいに、多くのエキストラを起用して、
社会が混乱に陥っている様を描いたところで、失敗している日本映画は多くある。
今回こじんまりした中で狂気殺人を描くことで、ある意味見やすくなり、
重くならないのがとても良い。
園子温みたいにエグさを強調させて、落ち込ませる手法もあると思うが、
今回はあくまでライトに見せながら、二人の狂気性が増して行く過程で落ち込むこともなく、逆に少しずつテンションが上がっていく感じがあった。
そこに興奮することがいいことなのかは微妙だが、
あくまで今作は二人の狂気性にフォーカスが当てられているので、
私はこの軽くみせる手法は成功だし、今までもあまりなかった新鮮な映画にみえた。

そして、説明を最低限にしようとしている部分もいいですね。
終盤にそれが集約されるが、余韻を残しながら終わる日本映画は少ないし、
これも情報の取捨選択をするCM出身の永井監督だからできたことかなとも思う。

個人的には菅田将暉の狂気性ももう少し伏線として感じたい部分もあったかな笑