かつきよ

バズ・ライトイヤーのかつきよのレビュー・感想・評価

バズ・ライトイヤー(2022年製作の映画)
3.4
うーん、普通!無難!

「結構大人向け」「子供向けではない」
というような感想を多く見たので、トイストーリーの作中作スピンオフといいつつ、SFの傑作を期待しすぎてしまった。

たしかに、子供向けのわいわいアニメ、ノリノリのエンタメアニメではなくて、ストーリー、設定展開は本格SFもの。しっかりとした世界観で、コメディ色や娯楽色よりも、ヒューマン色とかSF色の方が強かったです。

ただ、内容は結構普通。道徳的で教科書的な話運びで、教育的にもよろしそうな冒険譚。つまらないわけじゃないけど、わりとテンプレだったり、ありがちな展開で、ここ近年のSF大作のトレンドを混ぜて均した感じ。
普段から重めのSF作品を見てるようなユーザーには、ストーリーや展自体に意外性はないと思います。
本格SFにあんまり馴染みがないとしたら、導入篇には敷居も低くていいかも。

前半と後半で作品のテイストが違っているのも個人的には……。インターステラーの場合はストーリーのテイストが変わっていってフェーズが違っても、組曲のような印象だった。一方で、今作、ライトイヤーの場合は、前半部分が導入にしては長ったらしく、しかしそれなりにずっしりとした設定なので、尺不足にも感じてしまいました。後半は寄せ集めのチームものの冒険譚ですが、チームもので一番大切な「キャラクター」が薄すぎて……。

○映像は綺麗

さすがディズニー
アニメーションはべらぼうに綺麗で、文句なし

○スピンオフとして

トイストーリーの作中作品、バズ・ライトイヤーの映像化。昔は作中作っていう概念が理解できなくて、バズ・ライトイヤーってなんのアニメのキャラなんだろう?と思っていたけど。
少なくとも当時思い描いていたバズのストーリーはこんなんじゃなかったし、スタッフもこんな感じのストーリーは想定してなかったんじゃないかなぁ。
もっと娯楽色強めの、どちらかというと設定ももっと思い切った子供向けのSFアニメだけど、その中にも結構しっかりしたテーマが一本横たわってるので大人も見応えがある……って感じのイメージでした。
今作は冒頭から結構重め。全体的にストーリーの質量も重くて、要素が詰め込まれてるので、二時間近くありファミリー向けにしては長丁場の作品なのに、それでもかなり駆け足に感じました。設定に対して展開やテーマを盛りすぎな気がするんだよなぁ。これじゃぁあんなにバズのおもちゃが空前絶後のヒットはしないと思うし、バズよりもソックスの人形の方が売れるし、玩具屋にたくさゆ並ぶ気がする。

冒頭でアンディ(トイストーリーのおもちゃの持ち主)の名前が一瞬出て来て、作中作のスピンオフだよーって提示するような一文が流れるけど、それ以外はトイストーリーに関わる要素はほぼない。
無限の彼方へ!っていうセリフとか、スペースレンジャーとか、おもちゃの機能として搭載されてるレーザーとか、トイストーリー本編から輸入して来ているであろう、覚えのある要素はもちろんある。でも、トイストーリー本編未鑑賞でも全く問題ないと思います。普通にもう、別物。

もちろん、トイストーリーを見てると、おっ?て思う要素はすこーーーしだけあるけど、重要度も低いし、その気付きによって面白さが劇的に変わるような物でもないので、全然トイストーリー見てなくても大丈夫です。両作品同士、どちらから見てもネタバレにはならないような作りにはなっていました

○キャラクター

最初の方でも言及した通り、一番問いたいのはこの点。特に後半の「よせあつめチーム」ものの映画展開として、キャラクターが薄すぎる。そして、なんならチーム以外のキャラも。
映画を見たみなさんに伺いたいのですが、バズ・ライトイヤー、ソックス、ザーグ……ギリギリ
ホーソーン。この四人以外のキャラクターの名前、覚えてますか??

スペースレンジャーとして誇りを持っているバズ・ライトイヤーが、成り行きで有象無象の集まりである素人集団と状況打破する事になって、素人である他メンバーのことをやっかみながらも、人情とか人生の大切な価値観を学んでちょっとずつ変わっていく……というストーリーは、ベタながらも好き。ただ、一応ヒロイン枠のホーソーン以外の残りの二人のキャラクターが、めちゃくちゃ埋没してる。出番は多いし活躍もするけど、全然重要な活躍はしないし、人となりも好きになるほどのものでもないし、特に魅力がない。過去や価値観の掘り下げもないから、キャラクターとして全然印象に残らない。
ホーソーンちゃんはいろんな要素があってまだ「真の仲間」って感じもするけど……
他の二人は最終局面まで見ても、成り行きで一緒になった人たちって感じが抜けませんでした。

さらにいうなら、バズ・ライトイヤーが、一応主人公としてはテンプレだけど(有能だがプライドが高くてなんでも一人でやろうとする系)、成長したはずの最後まで見ても特に大好きになるような魅力を感じない。トイストーリーのバズの方がもっと深い成長を遂げていた気がする……笑

○冒頭〜しばらくのストーリー

結構SFとしてBIGなイベントが起こるります。ただ、メインのテーマにできそうなSF展開を、後半の展開への前提条件、プロローグっていう感じで、わりとダイジェスト気味にストーリー展開してしまうのが個人的には残念。
「それ」による作中世界への影響って、もっと大きい物だと思うし、バスの心理にももっともっと深い傷を残すような出来事だと思うんだけど……。詳しくはネタバレ有りの感想で書こうかな。
状況描写や心理描写が希薄に感じてしまい、その後の展開にも少しばかり没入しづらかった、かも。

○ラストはまあまあディズニーらしい
だけど、すごーくテンプレ的で、意外性や、あっ!となるような面白さ、伏線回収とかは特になし。普通にいい話でしたって感じです。

○総評
興味あるなら見て損はないけど、見た方がいい傑作って感じではないです。
予備知識はいらないと思います。スピンオフだけどトイストーリー鑑賞の必要はなく、誰が見てもOK。






※以下、ネタバレあり

















ネタバレあり感想











ーーーーーーーーーーーーーーーーー





※ネタバレ有 感想





○AIとソックスどっちもいるのが好き
花吹雪好き

SFに欠かせない要素である人工知能のパートナー枠。一応ソックスが今回はそれに該当するのかな。可愛いし有能だし、感情らしきものも垣間見えてとても良かった!機械的な部分はもちろん多いんだけど、その中にもユーモアを感じるのも◎

関係性の構築として、一番バズとの距離感の詰め方がシームレスで心に残って刺さったのはソックスかな。最初はやっかんでいたのに、そのうち欠かせないパートナーの位置に落ち着いていましたね。
ラストシーンで、いつも裸だから服を着ているのに違和感を感じているソックスちゃん可愛すぎた。

若干残念だったのは、ザーグのパートナーだった「未来ソックス」ちゃんが、「新しい君も好きだ」っていって現代バズに協力してくれるシーン。
視聴者としてはもちろん現代バズに共感してるし、絶対正義だから寝返ってくれて嬉しいけど、説得とかもなしにこんなにひらっとザーグの掌返ししちゃうのはどうなんだ……。
ザーグの価値観は間違っていて、現代バスの方が正しいのでは?って思いつつも、何十年もともに過ごしてきて、その孤独の苦しみや後悔に苛まれる姿を見ているソックスちゃんは、ぎりぎりまでザーグを裏切れない……でいて欲しかった……
こういう点でもキャラクタの掘り下げとか描写が薄いなと思ってしまうんです

謎の音声システムとして、ソックスちゃん以外にもナビAIがいたのも個人的には好感度高め!!
超光速成功したら花吹雪してくれる無駄な機能あるのも好き。スパンコール爆撃かよ笑笑

○具パン具

のサンドウィッチ食べたい。でも、食べやすさとか手が汚れないとか全否定笑
どんな未来でもこうはならんやろっていう笑
むしろなんでパン挟んだ笑笑
ハンバーガーも肉パン肉なのかな笑笑

○時の流れによる影響って……

5年ごとに時が過ぎていく冒頭の展開は正直驚きました。
浦島理論にもめげずに、孤独に立ち向かって?自分の失敗を取り返そうと躍起になるバズかどんどん時間に取り残されていくのが切ない。
けど、違和感は色々あって、ただから回ってる風にも見えてしまう。無謀で向こう見ずで、人生を棒に振ってるというか……。実際にその結果の終着点がザーグなんだろうし。
5年ずつ世界に取り残されていくのって、相当な出来事だと思う。失敗を取り戻したいという強い意志や、レンジャーとしての誇りや矜持はあってもいいと思うけど、もっともっと後悔……まではいかなくても、葛藤とか、悲しみとか絶望とか、やりきれなさとか……それでも宇宙へ飛び出す!という断崖を踏んだ、深く丁寧なバズの心理描写が欲しかった。

さらに違和感を感じたのは、環境の変化が乏しいこと。
5年、10年、どころか、60年もあれば、星の景色が丸ごと変わるような時代の流れがあるはず。5年後時点でコロニーのような、街のようなものが形成されているのはよかったが、その後の5年10年〜では技術的な変化や環境の変化が乏しく感じ、登場人物が老けている事以外に時間の流れを感じる出来事はない。例えばソックスは5年ごとにアップデートされてよりリアルな生態ロボットになっていてもおかしくないし、技術の進歩によって生活様式が帰還のたびに変わっていたり、ファッションやデバイスが変わって毎回順応するのが大変だったり……そう言うリアルさが足りない気がしました。
宇宙へも行ける技術力を持っている文明なので、作中の雰囲気が文明レベルの一種の到達点であり、これ以上の革新や目に見えた進化はないっていいたいのかなと考察してみたけど、それにしても、人を拉致しようとする怪物植物が駆逐されておらず、生活区域に侵入し、撃退方法が蔦を切断する……と言うレベルからいつまで経っても進化しないのはおかしい。この星に永住するにあたって一番の現実的な問題だろうから、駆除薬が散布されたり、現れた場合の確実な撃退法も確立しているはずではないのだろうか。
60年前に使っていたスーツも現役で使用できるのはどうなのか。60年もあればデザインも性能もさらに新しい革新的なスーツが開発されていそうなものだが(宇宙へ行く目的が無くなったから宇宙探索用のスーツの開発需要が無くなり、その点において技術革新が起こる余地が無かったのかもしれない。)
せっかくユニークな設定なのに、時の流れの表現が甘かったなあと言うのが正直な感想。

○ソックス有能すぎる
60年前の旧型のロボットが、セキュリティをロックできるほどの権限や機能を有しているとは思えない。そこの設定にももう少し捻りが欲しかった。(ソフトウェアはアップデートされていて、ホーソーン権力でトップクラスの権限を持っていたとか、独自進化を遂げてネットワークのほとんどを掌握してるとか……)

○スーツダセェ
こればかりはしょうがないけど、バズ・ライトイヤー、スーツ着ていなかったり、髪の毛出しているような格好の方がかっこいい。
バズのトレードマークであるあのスーツは、どことなくダサい。原作の設定だからそこが変えられないのはわかるけど……笑

○ザーグお父さんじゃないんかい!!

トイストーリー2を見た人なら、ザーグ=お父さんっていうネタバレは周知の事実
ザーグの中からおじいちゃんが出てきた時、うわ!お父さんだ!って思ったしバズ本人も思ってたのに、まさかの未来の本人!!!
トイストーリー見てる人ならではのミスリード。
すごく細かいところだけど、そうするとトイストーリー2の内容と矛盾する事に。なぜザーグはバズの父とい打ち式を持っていたんだろう……笑
続編ザーグの逆襲では、本当にバズの父がザーグの役割を引き継ぐのかな。
バズってロボットが発音できなくて「ザーグ」になったって設定、そんなんありかよ

○おなじみのウィング!!

ラストで手に入れた、バズ・ライトイヤーおなじみのウィング!!!!このタイミングで手に入るんかい!!笑
トイストーリー知ってると、と思うシーンその2
かつきよ

かつきよ