モクゾー

竜とそばかすの姫のモクゾーのネタバレレビュー・内容・結末

竜とそばかすの姫(2021年製作の映画)
1.5

このレビューはネタバレを含みます

●これは…脚本と設定が…

だいぶ問題あるのではないか。。
サマーウォーズ以降から、結構脚本がきついなと思い出していた細田映画。
(サマーウォーズも僕らのウォーゲームのコピーですよね)
他の作品を全て見ているわけではないが、今回いよいよ大丈夫か?と思ってしまった。


まず設定。
Uなる、YouTubeの仮想現実版の世界。このつまらなそうなこと…
何をするための場所なのか、なんで世界中で流行っているのか、誰がこれ使うのか。
ここは世界中のみんなが全員集まり、熱狂しているなんです…という設定のための設定感が強い。YouTubeでいいじゃん。

そして、キャラ。
まぁ、ありがちな設定か。
細田映画に頻出する、「不憫な境遇のキャラが世界中のあらゆる人に認められて、ホクホクする」という鉄板パターン。が、しかし、主人公のスズちゃん、かわいい普通の女の子じゃないかと。
現実と仮想現実の設定があるのに、二つの世界のキャラ設定がが弱く、重なりも、裏表にもなっていない。
歌も、現実世界でだって歌おうと思えば歌えるの?じゃあ、才能ある人間がやる気出すか出さないかだけじゃないかと。
もっとキャラを追い込まないと、ぬるま湯な設定になってしまっているので、興奮も無ければ、カタルシスも、共感もできない。

そしてキーになる歌。
映画で歌を聞かせて感動させるのって難しい。自分がその歌好きだって思わなかった瞬間に、白けてしまうのだから。
そして、この映画でテーマになる曲も白けさせてくれる。特別悪いというのではなく、別に心揺さぶられないのだ。
こんな曲が世界中で流行る訳ないだろう、と。これもノれない理由である。ノれない曲に、映画の中のキャラがみんな涙して聴いてるなんてのを見せられると、本当に早く終わって欲しいと思って見ていた。
ミレパレ好きな人、バイアスで良いと言ってませんかね?そんなにスペシャルな曲だったかなぁ…普通の歌じゃないかな。もう覚えてないし。
手嶌葵やaimerのような声や唄自体に癖が強い人を起用していたら、まだ納得性は高かったかも、と思いました。


物語。
戦いが強くて嫌われる(理由はよくわからん)竜がポッと出の歌姫と仲良くなる仮想世界話と、高知の田舎の普通の女子高生がネットで有名になって、なんか知らんが他の家の家庭内暴力を助けるために会いに行く現実世界の話…という、何を見せたかったのかわからない運びである。
そして、最後のスズがUに素顔で現れて歌うという、肝になるギミック…これは、本人の現実世界に多大な影響があるリスクを犯した行為だと思っていた…がそれには全く触れない。
面白くなるのは、顔をばらしたことが現実にどのような影響をもたらすかではないのか?
作者自身がそんな大切なことに気が付かないなんてことないとは願うが…
この話、ストーリー自体が成り立っているのか?

ということで、全てが、「俺が考えたイメージ通りにストーリーを進めるためのご都合設定」で、初稿をそのまま校了した感じである。細田さんは多分承認欲求が強い方で、良いもの=みんなに認められるもの なんでしょうね。そんなことはないと思います。


じゃあ、どうすればよかったのか…
例えば、
ものすごい見た目が醜くて悲惨にいじめられている歌が上手い子が、仮想現実上では歌姫になって現実逃避をしていた。でも仮想現実で自分を最初から支えてくれていたファンの一人が自分のように酷くいじめられているのを見て、それを助けようと決心し、その手段として醜い顔を晒して世界に向けて歌う。その姿を見て幾万のフォロワーが離れていったけど助けたかったファン一人と本当の仲間だけがそこに残ってくれて、この有象無象の世界でちゃんと繋がる。本当の意味で歌が届き、仮想世界でだけ存在意義を感じていた主人公も、現実世界で自分の価値を見つける…。
みたいな方がまだいいのではないか?
知らんけども。


他にも、たくさん文句は言えるが、
(美女と野獣オマージュ?なんてわざわざいうほどもないしょうもない設定)
相変わらず絵については良いと思う。ネクストジブリと思えるような、季節を感じるさわやかな絵にはアニメ特有の魅力が詰まっている。
新海映画のように、そんななら実写にすればいいじゃん、ってものでなく、動きにも風景にも、現実を拡張したようなアニメらしさがあって良い。

…この映画は、仮想現実の部分をカットして、さわやかな高校生活にフォーカスを当てて、主人公をタイムリープで時をかけれるようにしたら、もうちょっと見れるものになるかな。

細田さんは別の方の脚本でアニメーターとなった方が良いのではないかと思う。


見るつもりなかった映画を付き合いで見せられたので、口がちょっと悪くなってしまった。反省。。
絵が良かったので1.5点!