滝和也

U・ボート ディレクターズカットの滝和也のレビュー・感想・評価

4.0
潜水艦映画にハズレなし

潜水艦を舞台にした
第二次世界大戦の
戦争映画の代表作。

そのリアリティ、
作品の映画的な巧みさに
唸るしかない…。

「U・ボート ディレクターズカット」

ヴォルフガング・ペーターゼン監督をハリウッドへと押し上げた西ドイツの名作です。圧倒的な緊迫感と恐怖、焦燥感、そして戦争の虚しさを見事なまでに現した戦争映画。

第二次世界大戦末期。ナチス・ドイツの潜水艦隊はジリジリと追い詰められていた。開戦後、猛威を奮ったUボートも連合国の物量とレーダー、ソナー技術の進歩により数を減らし、群狼作戦は取れず僅か12隻で大西洋をカバーしていた。また兵は若く技量を欠いていた。その中U96は歴戦の勇士である艦長に率いられ出撃していく。待ち受ける運命を知らず…。

原作は史実として従軍記者により書かれたものだけに、リアルであり、その記者が語り部の少尉として登場します(吹き替えは池田秀一さん、シャアでした(^^))。ディレクターズカットだけに、その航海の日々が詳述に語られています。

前半はその航海が余りに無駄かのような展開からくる焦燥感が表され、中盤には戦闘へ。その高揚感も素晴らしい。

ですが素晴らしいのは、その後でしょう。潜水艦と言う特殊すぎる環境の恐怖そして過酷さを見事に描いている事。潜水艦と言う閉鎖空間の狭さ、そして静けさの中の音の恐怖。時化に揺れる船体音、深海の水圧に軋む船体、迫る駆逐艦のスクリュー音、見えない敵からのアクティブソナーによるピンガー、そして爆雷の爆発音。

その後に現れる目に見える恐怖、火災、浸水、水圧で弾け飛ぶネジ、そしてガス。恐怖と緊張による狂気…。酸欠に目は血走り、髭は皆伸び、衛生面でも身体も心も蝕まれていく凄まじさがリアルに描かれています。

またユルゲン・プロノホウ演じるベテラン艦長と仲間たちの意地にも似たブロの技術により、傷だらけになりながら何度も危機を乗り越えるU96の勇姿。200分超えという長さを感じさせないエンターテイメント性。勇ましい音楽も素晴らしい。それ故に…あのラストの寂寥感が素晴らしく、虚しさが残るのでしょう。

ドイツ側から見た戦争を描くため、また潜水艦の特殊な状況をリアルに描くため、連合国側の描写は全くありません。そしてほぼ全てがU96内での描写になってます。原寸大で作られたセットによる撮影ですが、その迫力、スピード感、緊迫感は白眉。沈降する時、乗員が船首方向に駆けていくあたりの手持ちカメラ撮影も見事ですし、戦闘中のカット割も素晴らしい。正にその場にいる様で一緒に息苦しくなるようです…。

ヴォルフガング・ペーターゼンはこの作品が認められハリウッドへと渡り、何作も作製していますが、やはりこれが代表作ですね。長さがあるので時間の余裕がある時にはオススメです(^^)

追記…テーマ曲を聞いて聞き覚えが…あれ?宇宙戦艦ヤマト2199のBGMに全く同じものが使われてませんか…?まさか丸パクリ出ないでしょうが許可取ってるんでしょうか。確か次元潜航艇が出て来る話だと思いますが…(笑)
滝和也

滝和也