great兄やん

スペンサー ダイアナの決意のgreat兄やんのレビュー・感想・評価

4.0
【一言で言うと】
「伝統が蝕む“自由”」

[あらすじ]
1991年のクリスマス。ダイアナ妃は、クリスマスを祝うために王族が集まるエリザベス女王の私邸サンドリンガム・ハウスへ向かう。チャールズ皇太子との関係は冷え切っており、不倫や離婚がうわさされているにも関わらず、周囲は平静を装っていた。ダイアナは、外出しても他人からの視線を感じ、自分らしくいられる場所がないことに追い詰められていき、やがて限界に達した彼女は、ある決断を下す...。

伝統に生きねばならぬ“苦悩”。行動や言動すら密かに監視され、自分らしさという“自由”が内側から壊れていくダイアナ妃に終始息苦しさ、そして儚い美しさをも感じた。

確かに“伝統”と言われてみれば聞こえは良いものの、それが彼女にとっては一番の“病”だったという…王室って、やっぱり普通の感性だけでは生きていけない事に改めて気付かされましたね😔...

とにかくダイアナ妃を演じたクリステン・スチュワートの“憑依力”というのが本当に凄まじい。イギリス訛りの英語や当時のダイアナ妃の精神状態など、徹底的なリサーチを施して演じたであろう技量と度量が伺えましたし、尚且つ王室の伝統やマスコミの煽りなどの重圧を一身に受ける様を繊細に表現したあの演技力にはただただ驚かされるばかりでした。

それに静謐なタッチで描かれるイギリス王室の雰囲気や室外の雪景色など、圧倒的なカメラワークで映像を彩りつつ、その完璧さが逆に彼女を苦しめるメタファーとして活きているのが見事。
しかもダイアナ妃の“ドキュメンタリー”ではなく“寓話”という、いわばフィクションをないまぜに彼女の素顔を描く内容にも興味深かったですし、寓話だからこそ時折挟まれる幻覚のシーンにも辻褄が合っていましたね🤔

ただまぁ最初はリアリティを少しばかり期待していたのでかなり面食らいましたが...それでも重厚かつ冷徹な世界観に最後まで引き込まれましたし、その他キャスト陣の名演も光る、果てしない高級感漂う一本でした。

全体的にダイアナ妃の悲壮感が目立ったが、それでも後半で彼女の“救い”となった出来事や“決意”も描かれており、ラスト少し希望の残る余韻ではあったんだけど...その後に起こる“悲劇”を想像すると、手放しに喜べないのもまた事実😫

やはり彼女は最後まで“自由”になれたのだろうか...いやはや、謎多き人物ですよね〜🧐...