茜

The Girl Most Likely to...(原題)の茜のレビュー・感想・評価

4.0
ちょっぴりブラックな復讐系コメディ。
おブス故に男にも女にもバカにされ屈辱的な目に遭ってきた主人公が、交通事故による整形をきっかけに超絶美人となり、自分を傷つけた奴らに「利子をつけて」復讐をする話。

70年代のテレビ映画らしいんですけど、分かりやすいしキャッチーでとっても面白かったです。
おブスが前向きにキラキラ輝く万歳映画なら世に腐るほどありそうですが、美人になってもなお屈辱感が拭えず復讐劇に走るっていうダークさが私には刺さった。
主人公のキャラ付けも上手で、彼女は決して卑屈でウジウジしたブスではなく良く喋る明るい性格で、ユーモアのある言葉で笑いを取ろうとしたり(スベる事も多々あるが)、大勢の前で恥をかかされ嘲笑されてもその場を明るく取り繕うとする。
その健気さに心を打たれるし、きっと観ている人の殆どが彼女の事を「憎めないし嫌いになれない」って思うはず。
そこから絶世の美女に生まれ変わり復讐へと歩む彼女の姿には「よし、やったれ!」っていう爽快感すらおぼえる。

ただ復讐劇に様変わりしてからの展開も皮肉なもので、美女と見るや否や一斉に掌を返す男性陣の姿に哀しくもなり、結局見た目が全てなのか~なんてやるせない気持ちになる。
私は「可愛い」とか「綺麗」って外見だけに用いる言葉じゃなくて、その人の雰囲気や言葉や性格といった内面に対しても当たり前に使う言葉だと思ってるけど、実際「あの人可愛いよね」って言うとそれが全てその人の外見に対して向けられてるって解釈する人うんざりする程いるんだよね。
だからこそ「美人になれてハッピー!」な綺麗事じゃなく、本作の「掌を返す奴らに制裁!」ってスタンスは間違ってないし共感する。
主人公が劇中で言ってた「中身は私のままなのに」みたいな台詞にちょっと心がギュッとなった。

ビターなブラックコメディで、切なくもあり、複雑でもあり、可愛い。
茜