これが松本俊夫監督の劇場用長編第1作目でありピーターのデビュー作って凄いなー。
60年代の日本にもゲイバーやゲイボーイという人達が存在していた事にも先ず単純に驚いた。
当時の人々や街の姿が極めてリアルに映し出されていて、単純に歴史的価値の高い作品でもあるように思う。
この映画の中に在る昭和の風景が現代より余程自由でエネルギッシュで活き活きしているように見えて私には凄く魅力的だったし何だか寂しくもなった。
お話は同性愛から薬物・乱交・近親相姦まで網羅。
「オイディプス王」なるものがモチーフになっているらしいのだけど私にはさっぱり。
ただ劇中でピーターが何度か「アポロンの地獄」という映画の看板の前に立つシーンがあるんだけど、この映画こそまさしくオイディプス王の映画化なんだそうで、そんなちょっとした演出が小洒落てる。
映像はまさしく実験的で、時系列ぐちゃぐちゃ系なのは今でこそ目新しくないけれど、劇中に出演者のインタビューが挿入されるのは流石に驚き。
映像は何処を切り取っても美しく、少しあどけなさも感じられるピーターも魅力的で、埃っぽく見える街並みとモノクロの美しさと人間の生々しさと黒い血のグロテスクが混在した世界。
この時代のアンダーグラウンドに傾倒していた自分にとっては紛れもない傑作なんだけど、何よりも衝撃的だったのが淀川長治の使い方っていうのはどうしたもんか。