彦次郎

帝銀事件 死刑囚の彦次郎のレビュー・感想・評価

帝銀事件 死刑囚(1964年製作の映画)
3.7
敗戦から間も無い昭和23年に強盗目的で12人を毒薬で殺害した帝銀事件を題材としたドキュメンタリー風作品。淡々としたナレーションが客観的なのに対して作品中の記者達が凄まじい熱量で事件を追っている対比が特徴的です。
職員を装って堂々と的確に毒を飲ませる非人間性と蓋然性に賭けたような杜撰さが同居しているところが犯人の絞り込みの難易度を上げていたと推察されます。何より現場が荒らされて科学的検証物件が僅少だったのが辛いところです。
映画のテーマは分かりませんが戦前のスタイルによる自白の信憑性は人間性の喪失を示しているようにも見えます。ただ類似の犯罪事件と金の出所を明らかに出来なかった事が平沢犯人説に傾いている事も否定できません。七三一部隊にせよ犯人が別にいるとしても不気味ですし、あれだけ篤実そうな雰囲気(犯罪歴はあるけど)を醸しだす平沢氏が真犯人だとしてもやはり不気味。その意味では社会派ホラーというべき作品です。とはいえ終盤の娘との面会場面は琴線に触れました。
ちなみに平沢氏は95歳で獄死、冤罪故に法務大臣が死刑執行の判を押せなかった説があります。
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