Shingo

地獄の花園のShingoのレビュー・感想・評価

地獄の花園(2021年製作の映画)
3.0
「いいからお前ら仕事しろ」ってツッコミはさておき、いかにもバカリズムらしいオンナを見下した作風、いや芸風?OLたちによる給湯室の派閥争いなんて、しょせんはオンナ同士のマウントの取り合いでしょ?みたいな。
まあそれでも、ケンカ上等のヤンキー文化を冷笑する設定が土台になっている分、女性蔑視的な部分は薄らいでいる。

主人公二人が、少年漫画によくある「天才vs努力」の構図になっており、劇中でも自分自身を「マンガの主人公」のように捉えていて、メタ的な視点で描かれる点はけっこう面白くみれた。
OLが会社の看板を背負って抗争をしているという構図も、いわば学校の看板を背負ってケンカに明け暮れるヤンキー漫画のカリカチュアである。
OLが仕事そっちのけでケンカしている滑稽さは、そのまま不良学生がケンカで強さを競うバカバカしさを揶揄していると言えるだろう。

往年のヤンキー漫画が実名で登場するが、おそらくそれらに対するリスペクトとか一切なくて、むしろ殴り合いで強さを競うとかバカじゃないの?という冷笑視点が全編を貫く。
蘭のカレシが最後に駆けつけて「ケンカなんか強くても意味ないよ!」と身も蓋もない事実を告げるのは、実に悪意があって面白い。

川栄李奈のスケバン姿をみるにつけ、やってることは「マジすか学園」と変わらないわけだが、会社内でそれをやっているシュールさがいい。社内をド派手な恰好でうろついても、殴り合いを始めても、他の社員は知らん顔してるし、そもそも視界に入ってすらいないかのようだ。
彼女たちがどれだけケンカが強くても、会社内では一介のOLに過ぎず、男性社員のサポートに徹しているという構図は、ある意味では社会風刺と言えなくもないが、どっちかと言えばバカリズムの「しょせんOLでしょ?」という上から目線の反映のような気もする。

それはそれとして、役者陣がそれぞれの役になり切って、身体を張ったアクションをみせてくれるのは純粋に楽しめた。キャットファイトはあまり痛みを感じさせ過ぎると見ていられなくなるが、そこまでいかない丁度いい塩梅で殴り合いを成立させており、漫画チックながら十分に見応えがある。
広瀬アリスや菜々緒をはじめ、品のある役者を配しているのもうまい。ラスボスの小池栄子なんかは土屋アンナでもよさそうだが、彼女では粗野な印象が出すぎて「OL感」が足りないだろう。

直子と蘭のタイマン勝負に決着がつき、ケンカには勝ったものの恋に破れた直子が「完敗」するラストも、なかなかいい幕切れではあった。
まあ、ここにも「実力で勝とうが恋愛で負けたらおしまい」というオンナをバカにした目線が感じられるわけだが…。
あからさまに女性蔑視な描き方をしない巧妙さがバカリズムの脚本の妙というべきか。いや、ほめてませんよ!
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