B5版

オートクチュールのB5版のレビュー・感想・評価

オートクチュール(2021年製作の映画)
3.0
2022年映画納めは『オートクチュール』。

ひょんなことから、お針子のその道トップクラスの女性に弟子入りすることになった移民の女の子の話。
ここまでのあらすじだと、まるでフランス版『プラダを着た悪魔』だけれど、まぁ主人公達の癖が強い強い。
あくまで映画用にリデザインされたキャラクター達の物語ではなく、人の心の機微が生々しいのである。
フランス映画のこういうところ本当に好みが分かれると思う。

主人公エステルは仕事に人生を捧げ、それ以外は自堕落な生活を送る、キレやすい孤独な女性。
移民のジャドはナチュラルに窃盗を働き、指摘されては逆ギレする不良。
二人とも真っ当な主人公として胸を張れる人物ではない。可愛げを持たず、別の派閥に位置する人間には侮蔑を隠さない。偏見のるつぼだ。
しかし、この気難しさのピースは登場人物のどこかに必ず割り振られており、はじめは「欠け」を隠さないあけすけな態度にあっけにとられたが、また同時に他人の「欠け」にも寛容にチャンスを与えるシーンにこの国の文化の片鱗を窺い知れる。

フランスという国に生えている棘はそのままに描きつつ、技術にプライドをもち、仕事への誇りを次の受け手に繋いでいくフランス流お仕事映画だった。
B5版

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