大泉洋主演の北海道シリーズ三部作の第一作。
毎回ひとつの「食」がテーマで本作はパン。
この映画は典型的な「箱庭映画」(あ、勝手に自分が作ったカテゴリーです。すみません。「グランド・ブタペスト・ホテル」が代表例)だ。
北海道ではなく北海道らしき「箱庭」を舞台にした絵本。
個人が創る「箱庭」なので
その中のルールや造形物、人物配置は、
持ち主=監督=神がすべて決めて良い。
だからパン屋さんの営業のリアリティが無い、郵便屋さんの衣装がおかしい、といった批判は、作り手からするときっと無粋でしかないのだ。
これは単なる雰囲気映画ではなく、
前衛的な現代美術のような作品だと思った。
ゆるくふわっとした体でありながら、
実は観客に鋭く選択を迫ってくる。
「私のことをあなたは好きかどうか」。
その緊張感が、
作品に静謐さと透明感をもたらしていて、
自分は割と心地よく受け入れることができたが、
無理な人は多分無理。そう言われても納得できる。
かなりお客さんを選ぶ作品じゃないでしょうか。
でも、大泉洋主演で北海道、となると、
特に地元の人の期待は別の方向に高まっただろうし、
その壁を乗り越えてこの方向で着地させた
制作陣のある心意気は感じられた。