サラリーマン岡崎

Arc アークのサラリーマン岡崎のレビュー・感想・評価

Arc アーク(2021年製作の映画)
3.9
石川慶監督はやはり技術面で光る監督であって、物語面では弱いと感じてしまった。

海外で映像を学んだことを武器に商業デビューした『愚行録』でもそれを感じたが、
映像としては日本映画にない作り方を不自然なく撮影していてとてもすごいとは思ったが、
それに物語があまりついていっていなく、ステレオタイプな話で終わってしまった印象がある。
次作の『蜜蜂と遠雷』がとてつもなく良作だったが、
監督と同じようにこれは同じように芸術の中で技術を高め合う作品だったからこそ、
石川監督も物語面でも拍車がかかり、上手く調和ができたんだと思う。

そして、今作、アーティスティックな表現と作中で語られる「プラスチネーション」は調和されているが、
物語のテーマである「死」と石川監督のアーティスト性があまり上手く調和していないように感じる。
前半はプラスチネーションを主に扱うので、アーティスティックな表現と相待って、観客のテンションも乗っていくが、
後半の施設での話になると、基本モノクロトーンになるだけ。
後半の方が作品のテーマを多く語っているが、前半のアーティスティックな表現は何の意味があったのかがよくわからなくなってくる。
後半で出てくるある夫婦の「愛」がとても重要なシーンだが、そこには特にアーティスティックな表現は全然いれていない。
そこにこそ石川監督の良さを多く盛り込んで欲しかった。。。
そして、行き着く最終的なメッセージもとてつもなく平凡なものであった。

『愚行録』と同じく、アーティスティックな表現で観客にプロモーションしているのは成功していると思うが、それと物語が全く調和していない。
CGの技術だけがすごい山崎貴と同じ様な匂いがする。
石川監督が悪いわけではないし、石川監督の表現力を最大限活かした作品は是非とも見て見たいので、
『蜜蜂と遠雷』の様に石川監督が最大限発揮できる作品を配給会社はしっかり選定すべきだと思う。