踊る猫

カビリアの夜の踊る猫のレビュー・感想・評価

カビリアの夜(1957年製作の映画)
4.1
フェデリコ・フェリーニという人は女性をよく知っている。というか、彼自身が女性的な性格を備えていた人間ではないか、という気さえする。だからこそ、女性の愚かしさをリアルに描くことができるのだろう。誇張せず(だから、ハネケやトリアーのような「機械仕掛けで動かされている」という印象がない)、キャラクターに血を通わせることに成功している、というか。ストーリー展開は相変わらず稚拙なところがあるのだけれど、それを補ってそういったキャラの造形が成っているから、口元を少し綻ばせるだけでこちらの心は鷲掴みにされる。見事、としか言いようがない。ストーリーは縮めて言えば絶望を踏まえた前向きさを描いたものなのだけれど、その絶望がブッツァーティの小説のように生々しくかつ笑えるものである分身につまされるものがあり、そしてあたかも冒頭で主人公が川に突き落とされる場面のように呆気なく不幸というものは訪れるもので、この世には救済も奇蹟もなくて、でも生きていかなくてはならないのならカンツォーネの調べに酔いながら生きていこうか、という気にさせられる。フェリーニは人生の達人なのではないか?
踊る猫

踊る猫