kuu

明け方の若者たちのkuuのレビュー・感想・評価

明け方の若者たち(2021年製作の映画)
3.5
『明け方の若者たち』
映倫区分 R15+.
製作年 2021年。上映時間 116分。

WEBライターのカツセマサヒコによる長編小説デビュー作を北村匠海主演で映画化。
大都会・東京に生きる若者に訪れた人生最大の恋と、何者にもなれないまま大人になっていくことへの葛藤を描く。
“僕”が恋に落ちる“彼女”を黒島結菜、“僕”の会社の同期で後に親友となる尚人を井上祐貴が演じる。監督は、自身も俳優として活動する松本花奈がメガホンをとる。

北村匠海演じる"僕"が会社に行くときに電車のホームへ落ちてタイムリープするのや!
と期待してる自分と、イヤイヤそれはちゃう作品やろって云う自分が混在しながら鑑賞。
黒島結菜って女優さんなんか独特な存在感やなぁ(演技の善し悪し抜きで)

明大前で開かれた退屈な飲み会に参加した“僕”は、そこで出会った“彼女”に一瞬で恋をする。
世界が“彼女”で満たされる一方で、社会人になった“僕”は、夢見ていた未来とは異なる人生に打ちのめされていく。

仕事とか一生懸命に没頭したのに、本人が期待した結果が得られへんとか、不満感や疲労感により、 あたかも、あしたのジョーの様(燃え尽きたように)意欲を失ってしまう状態を、燃え尽き症候群(パーンアウト)と云うそうっす。
しかし、現代社会は、中・高・大学受験パスや、エエ会社に入社することが目標と化してる。
それって、目標やなく、目的と化してる気がする。
確かに学歴一つとっても、新卒社員の初任給が同じ職種でも、院卒22万円、大卒20万円、高卒18万円学歴で格差が生じる。
勿論、職種によってはサラリーが変わるが、将来や現実の生活に目幸せになりたい、って本来の目的からは遠ざかり、あくまでも序の口の目標や、やらなきゃならんことに追われ、緊張の糸が切れた瞬間に、 極度の疲労感や何も手につかない感覚に襲われる。
主に、 エネルギーが燃え尽きてしまうので精神的なエネルギーの低下、枯渇が燃え尽き症候群の主な症状と云える。
こんなときエスケープ(その場所から一時的に避難する)するのもアリだし、今作品の主人公"僕"では将にその手を取り往なしてた。
遠回りの様で、実は彼にとって近道やったんかなぁと思った。
マジに頑張っていたけれど、努力する方法に無理があった場合、その頑張りは限界を超えて心のエネルギーはゼロになる。
恋愛も職への向かいかたも、主人公は、自らが望む望まないにせよ、無理があった方法でこなしてたのかもしれない。
エネルギーが枯渇して、心と身体がついていかないため何も出来なくなってしまう。
こないな症状も、今作品では少しながら描かれていた。
この症状は、突然現れることも徐々に現れることもある。
また、燃え尽き症候群では、症状が燃え尽きている対象 (仕事や恋愛など) に対して強くみられるそうで、それ以外の対象に対しては見られないという傾向があるのも特徴の一つ。
無理をしている事実を認めたくない感情が、自身を誤魔化し続けることで心身に悪影響を与える。
こないなプロセスを良く描かれていた今作品。
ただ、燃え尽き症候群になると、 相手に対しての対応が冷になることや事務的になることがしばしばある。
今作品の"僕"には描かれてはいなかった。
ひょっとしたら原作には描かれてるのかもと、機会があれば原作も読んでみようと思いました。
こないな態度をとる理由として、心が燃え尽きてしまわんように防衛していると云われてる。
すなわち、冷たく振舞うことで、余計なエネルギーを使わないようにしているのやろし、普通の人の精神の自己防衛は今作品で描かれてないのは個人的に残念かな。
また、この燃え尽き症候群が始まると、 目標にしていたことや待していたことが喪失してしまい、 対象に対して魅力や達成感を感じられなくなってしまうことがあり、これまで自信を持ってきた事に対して、 徐々に自信を喪失してしまうこともある。
結果として、 作業のパフォーマンスは低下しする。
今作品では、その点もなし崩して主人公は生きたのかなぁと。
このパフォーマンス低下は、本人だけではなく職場全体のパフォーマンスに影響を与える可能性があることも研究により明らかになってるし、その点をビビった主人公の上司は気を遣ってる様子が描かれてるのは笑えた。
ここで、ひねくれた小生が願ったのは、北村匠海演じる"僕"の絶望感や虚無感をより強く感じ、どん底のヘドロを舐める日々でしたが、それは全く描かれてないのも残念かな。
でも、まぁこないな症状から抜け出る第一としては、 現在の自分の状況を受け入れることが大切やと良く云われてるが、まぁ作品の行間で、主人公のそれは感じ取れたかな。
燃え尽きるほど頑張って達成できた目標の意味を知り、これからの人生にどのように活かせるのかを考え前に進むこと重要なんやなぁとも感じ取れたかな作品やったかな。
今作品のタイトル
『明け方の若者たち』
黎明や払暁と言い換えられ、夜の明けようとするころと意味するのは、酔いも出来ない、浅き夢から醒めようとする彼ら(若者)の様子は将に年齢や法律で制定されたもの以外のマジに大人になるということなのかもしれへん。
悩める青年たちには申し訳ないけど、老いに近づいている自分が少々淋しく感じられるかな。
酔えない、仕事への幻想や彼女の夢から醒めた彼は、次なる夢を見るやろけど、それはそれで、咲き誇る前の蕾の力強さの現れなんかなぁと。
酔えぬ夢も彼を形成させる糧となっていくんやろな。
外はそろそろ暗くなり始めた。
小生も今日は久しぶりに酔えぬ夢でも見たいものです。

余談が過ぎますが、
『燃え尽きた』 って云うことは、懸命に努力した結果やと思います。
もし、今思い悩む青年たち。
まずは、 心のエネルギー量が低下して、 何も行動する気持ちになれなくなるまで頑張ることができた自分を褒めてあげてください。
ある事柄に対して視点を変えて物事を考えることをリフレーミングと云うんやけど、 気持ちが落ち込んでいると様々なことに対して、ネガティブ補正がかかっちまいがち。 しかし、物の捉え方をポジティブにする癖をつけることで、 生きた方が楽になることもありますよー。
ほんで、しっかりと食事を摂り、休んで下さいな。
燃え尽き症候群になる人は、真面目で頑張り屋な方が多い傾向にあるし、勇気を持って休むという決断をすることは症状の改善には有効やと思います。
今作品の主人公のように😊
気分転換をするために、 日常から離れ何もしない時間を作るんもエエかなぁ。
心と身体に余裕ができたら、 新たに熱中できるものを探すことも然り。
『喪失感』だけではなく
新たな期待に胸を弾ませることで、 生きる活力になるかもしれませ~ん。
老婆心ながらのコメントでした。
kuu

kuu