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映画:フィッシュマンズのalmosteverydayのレビュー・感想・評価

映画:フィッシュマンズ(2021年製作の映画)
4.0
上映時間172分、特別料金2,500円の触れ込みに違わぬボリュームと密度。関係者へのインタビューと過去の映像を軸にここぞというタイミングでライブ映像を織り交ぜ、バンド結成から喪失と再生までをあるべき姿で記録しよう、世に知らしめようという気概をひしひしと感じました。

メンバーやスタッフ、バンド仲間の言葉は時に熱を帯びるものの、20年以上の時を経た今となっては基本的に穏やかな語り口であり、数少ないTV出演時の映像はもとよりレコーディング時のオフショットだって力の抜けた肩肘張らないものばかりなのに、そのひとつひとつにじっと魅入ってしまって3時間弱があっという間でした。彼らの音楽に思い入れがあればあるほど心の奥の深いところに刺さりそう、逆に言うとこれから彼らの音楽に触れようとしている層にはある種の権威みたいなものを意識させてしまって頭でっかちになりかねないかも。以下、雑感です。

・お墓参りの様子がごく当たり前のように和やか。墓前の立て札の年季の入り具合からも月日の経過をあらためて思い知らされるなど。
・インタビューの初っ端がUA。軽く一杯ひっかけた後みたいなテンションで喋ってて、製作側の仕事ぶりもしくは相手の懐に入り込む能力の高さみたいなものに感心してみたりとか。
・生前のメモなど、この手の作品ではサッと映しておしまいというケースが大半だけど、本作では端から端までじっくり読める尺をたっぷり取ってくれてる辺りに畏敬の念を感じます。JUST THINGの仮詞が今はなきmc Sisterのメモ帳?に書きつけられていたり、様々な発見が。
・欣ちゃんは大学やスタジオ跡地、野音。譲さんは奥多摩。小嶋さんたちは各々のホームグラウンド。郁子さんが語った「お客さんも皆、一緒に盛り上がってるんじゃなくてひとりひとりがカプセルの中にいるみたいだった」という言葉に呼応するかのよう。
・上映前は「クレジット順、譲さんより小嶋さんが先なんだ?」ってところに少なからず驚いてたのだけど、いざ観てみたらそれがストンと腑に落ちました。バンドにとっての一大事は小嶋さんの脱退が始まりで、それが最大のものだったのだと。
・ライター陣に話を聞くなら、正直言って川﨑大助さんだけじゃ片手落ちだと思うのです。バンドとの距離が近い印象が強くいくらでも話を盛れそうな気がしてしまうので、あともう一歩引いたより客観的なコメントが欲しかった。それこそ萩原健太さんとか。
・mari mariへのインタビューを行わなかった理由が知りたいです。不要と判断したのか、必要でも何らかの理由で叶わなかったのか。海辺の映像にほんのちょっと登場するだけって、言い方はアレだけど匂わせ感があってどうにもすっきりしないです。
・ポリドールのスタッフさんがいかにもやり手っぽく、時代のよさもあいまって聞いててわくわくしました。ワイキキの話、もっと深掘りしてほしかった。聞き足りない。
・欣ちゃんにはいろんなものがよく似合う。白いシャツも白いベンツも雨の野音も。他、思い出したらまた書き足します
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