平野レミゼラブル

あの頃をもう一度の平野レミゼラブルのレビュー・感想・評価

あの頃をもう一度(2021年製作の映画)
4.0
【今を踊ろう!】
『ラーヤと龍の王国』と同時上映の短編無声アニメ。
街中の人々が躍りながら歩き回る、ミュージカル映画めいた世界で、かつてのように軽快に踊れなくなって家で不貞腐れるお爺さんと、そんな彼を気にかけるお婆さん。
今日も今日とて、お婆さんの外出の誘いを断り、昔を懐かしんでいたお爺さんだったが、濡れると若返るにわか雨が降りだしたことに気付き……

父世代から離れ、主に新世代の若者達が大冒険を繰り広げるラーヤに対して、そもそもこうした冒険自体を諦めてしまったシニア世代に向けた映画です。
ラーヤでも雨は重要な要素となってましたが、本作でもメインギミックを担っており、若返ったお爺さんとお婆さんは濡れるのも構わず躍り回るのです。

水の表現とリズミカルな躍りが十八番なディズニーの本領発揮で、雨天時の夜景の美しさに楽しげなダンスもあって正に『雨に唄えば』。
実際に夫婦でダンサーをやっているケオネ&マドリッドがダンスをコーディネートしていることもあって、老夫婦も一段とイキイキしています。

しかし、雨はいずれやむもの。お爺さんが求め、縋った雨の切れ目で「あの頃」は終わりを迎えますが、それでも今を楽しもう!というメッセージへ転換させたことで涙。
濡れれば若返らせる雨が作る水たまりが、「あの頃」を映し出す鏡にもなる構図も美しく、素直に良い映像体験でした。

オススメ!