サラリーマン岡崎

茜色に焼かれるのサラリーマン岡崎のレビュー・感想・評価

茜色に焼かれる(2021年製作の映画)
5.0
すごい。その一言に尽きる。

「田中良子は芝居が得意だ」
この一文で映画は始まる。
この一文を見た時は、何を意味しているかは全くわからない。
でも、段々と彼女が社会の様々なことに我慢をして、気丈な様に振る舞っていることがわかる。
良子のレベルな辛い状況ではないが、自分も我慢をして気丈に振舞うことは日常茶飯事。
むしろ演技な方が大きいとは思う。

そんな芝居をしている彼女を通して、「何で生きているのか?」ということを問われる。
自分を守るために、人間は人に非常なことを押し付けていく。
それは、必ずしも自分起因だけではなく、社会からそれを強いられ、
非常な行動をしてしまうこともある。
スーパーマーケットの店長がそれを表現している。

そんな辛い中でも、何で生きなければいけないのか、
良子を見ていると、息子の純平がいることではないのかとわかってはくるが、
対照的に家族を持っていないケイも良子と同じ様に理不尽なことが降りかかる人物として出していき、
ケイが辿る運命を見せることで、生きる意味をより問いてくる。
自分も何で生きるのかな…とか少し自分の闇に触れてしまった…。

その中で希望の存在として描かれる純平がとてつもなく良い。
純平がいい男すぎて、俺も惚れたわ…。
純平の様に正義感が強く、でも正直な様に生きて生きたい…。
『明日の食卓』でも母と息子の関係が描かれていたが、やっぱり親がどうあるかって子供にとってはとても大事だよね。。。
純平みたいな息子育てたい…。

そして、この映画で最後に良子が見せる「リアル芝居」がとてつもなくすごい。
日常で芝居をしてきた彼女が解き放つ思いが本当に力強い。尾野真千子さすが…。

石井裕也の作品は得意不得意が分かれるけど、本作はとてつもなく大傑作。
尾野真千子も劇場で観て欲しいと言っていたが、僕もそう思う。
もう何回か劇場で観たいな。