牛猫

ブラックボックス:音声分析捜査の牛猫のネタバレレビュー・内容・結末

3.8

このレビューはネタバレを含みます

音声分析の専門家が、旅客機墜落事故の原因究明に奔走する話。

航空機事故が起きた際に原因解明の鍵となるボイスレコーダーが搭載されているというのが、まず目から鱗だった。本当にこんなアナログなやり方なんだろうか。

地味な作品ではあるけれど、主人公が音声分析の天才という設定なので、墜落までの音声ファイルを繰り返し聴くことになるのだけど、映画館の音響のおかげで臨場感が凄まじかった。限られた音声の中でわずかな手がかりを見つけ出す、主人公の病的なまでの繊細さや、あらぬ方向に突っ走ってしまう危うさにハラハラさせられた。
テロなのかシステムの不具合なのか、事件の真相に近づきそうで離れていく、その塩梅も上手かった。周りの人間が全員怪しく見えてきて徐々に孤立し追い込まれていく展開もサスペンスフルで飽きさせない。
黒幕は意外と分かりやすいけど、それを差し引いても後半のテンポの良さとまさかの展開に引き込まれた。

主人公を演じたピエールニネが好演だった。神経質で几帳面な近寄りがたいキャラクターかと思いきや、事故に向き合う中で正義感に目覚めていく様を見事に表現していた。顔のアップがよく出てくるけど、まつ毛の長さが半端じゃなかった。

技術が進歩していく中で実際の航空機でもシステムに委ねるか人間の手で操作するのか議論が交わされているようだけど、こういう映画を観てしまうと最終的な権限をシステムに任せるのは怖いと思ってしまう。

少し尺の長さが気にならないでもないけど、一味違った重厚なサスペンスが味わえる作品だった。
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