三次元からきたブロンディ

仕掛人・藤枝梅安の三次元からきたブロンディのネタバレレビュー・内容・結末

仕掛人・藤枝梅安(2023年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

記録

池波正太郎の原作『仕掛人・藤枝梅安』を再映像化した時代劇。
主人公 藤枝梅安が表向きは鍼医師だが、裏向きは殺し屋というもう一つの顔を持っている人物だ。

今作のEPは原作第1巻の第1話「おんな殺し」をベースにしている。
「おんな殺し」は2回ほど映像化されており、1つ目は必殺シリーズの第一作目となった『必殺仕掛人』と2つ目は劇場版『必殺仕掛人』の2作である。
TVシリーズと劇場版の違いは配役の違いである。藤枝梅安=緒形拳(TV)田宮二郎(劇場版)、西村左内=林与一(TV)高橋幸治(劇場版)となっている。元締の音羽半右衛門=山村聰は両作とも変わっていない。
今回の豊川悦司版梅安は原作をベースにしているので、『必殺』とはかなりと異なる。

私は原作と2つの映像化作品は既に読んで観ていたので、少し比較しようかと思う。
先ずは梅安の妹お美乃は今作では天海祐希だが、TV版では加賀まりこ、劇場版は野際陽子が演じている。
最初に見事に再現されていたのが、梅安とお美乃が初めて対面した時の場面だ。ここで梅安はお美乃が自身の母親と瓜二つだと確信し、驚く顔をする。ここは見事な演出で、原作とTVシリーズに基づいて描いている。

そして原作とTVシリーズでは梅安とお美乃と2人の母親には右の胸に黒子(おでき)があり、そこで梅安はお美乃が自分の妹だと確証する。しかし今作では小鳥に換えられている。こうしてみると此方の描写の方が納得が出来、辻褄が合う伏線となっている。

本作は光と影のコントラストを醸しつつ、映画雑誌のインタビューと解説では本作はジャン=ピエール・メルヴィルのフレンチノワールを描写を取り入れている。

因みに今作では食通の池波正太郎の原作のせいかかなりと料理が出て来る。湯豆腐、蕎麦などが本編に登場し、観客に空腹を満たす。本作は所謂飯テロ映画ともいうべき作品であろう。

本作が最初の『仕掛人・藤枝梅安』を観たという方は池波正太郎の原作とTVシリーズの『必殺仕掛人』第23話をご覧になることをオススメする。是非御時間があれば…