三次元からきたブロンディ

レスリング・ウィズ・シャドウズの三次元からきたブロンディのレビュー・感想・評価

4.5
記録

アメリカン・プロレスのメジャー団体WWE(旧:WWF)で活躍したブレット''ヒットマン''ハートに焦点を当てたプロレスドキュメンタリー映画。プロレス史の中で最も黒歴史と名高い「モントリオール事件」までを追った記録映画でもあり、そして本作はブレットの心情と彼のプロレスに対する向き合い方を記している作品でもある。カナダのプロレスファミリー ハート家の四男として生まれ、父スチュとその兄弟たちの絆を描いた作品でもあった。ハート家の家族構成は息子が8人、娘が4人という計14人の大家族。ブレットを含めた息子たちは皆レスラーになり、娘たちはレスラーと結婚し、その後の子供達や孫達も含めてサラブレット一家なのである。因みに父スチュが設立したハート道場ことダンジョンはフリッツ・フォン・エリック、ロディ・パイパー、ブライアン・ピルマン、クリス・ベノワ、クリス・ジェリコなどがこの道場の出身者でもある。

90年代の米プロレス業界はビンス・マクマホンのWWEとテッド・ターナーのWCWとの月曜日のプロレス視聴率戦争「Monday Night Wars」の時代でもあった。
序盤ではブレットがWCWに移籍するかWWEに残留するかという所から始まる。
プロレスには善悪の役割の関係性はもちろんブックというシナリオがある。だがレスラーが技を受けているのは本物であり、ブレットも過去の試合で肋骨全部を骨折したアクシデントも見舞われている。そしてプロレスは善(ベビーフェイス)と悪(ヒール)という役割で抗争して試合するものだったが、90年代中期になるとストーン・コールド スティーブ・オースチンなどが登場し、ヒールが大歓声を上げる時代となっていた。
ベビー一筋だったブレットはこれに悩んだが、オースチンとのレッスルマニアの対戦を機にヒールとなり、フェイスターンした。ここまでをWWE NETWORKで追って行く事が出来るので、是非配信の方で観て頂きたい。

次第にWCWとの視聴率戦争で負けていたWWEは97年から過激路線に変更し、アティテュード路線の時代へと突入する。
しかし正統派のブレットはこのアティテュード路線時代に全く受け入れる事が出来ず、ビンス・マクマホンとの関係が悪化して行く。そしてこれが「モントリオール事件」へと繋がって行く。「モントリオール事件」のサバイバー・シリーズ97年大会はWWE NETWORKでも配信されています。

本作はプロレスドキュメンタリー映画として最高傑作でもあり、この映画を観た後に2001年に公開した『ビヨンド・ザ・マット』ともう既に絶版になっているが『WWEの独裁者』の両方を読んで観て頂きたいと思う。