もものけ

スナッチのもものけのネタバレレビュー・内容・結末

スナッチ(2000年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

この作品は、個人的評価で傑作だった映画です。

定期的に鑑賞しております👍
ガイ・リッチー監督が大好きなんです!!

ロンドンで裏ボクシングのプロモーターを引き受けるターキッシュとトミーは、下手を売った代償を払うために奔走していた。
ニューヨークのアビーへ届けるダイヤを強盗する"フォー・フィンガー"フランキーは、小粒のダイヤを捌くためにロンドンへ立ち寄る。
ロンドンを舞台に、このダイヤを巡る争奪戦が繰り広げられることを、まだ誰も知らなかったのだが…。




感想。
英国のクエンティン・タランティーノ監督ともいわれるガイ・リッチー監督のクライム・サスペンス個人的四部作の一つであり、最高傑作ともいえる「スナッチ」。
キャスティングの豪華さと、この作品を踏み台にして有名になるキャスト達の存在は、まさにクエンティン・タランティーノ組のような痛快さがある作品と同じ系統を辿ります。

「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」
「スナッチ」
「リボルバー」
「ロックンローラー」
どれも綿密に作られた脚本からなる群像劇が、コミカルなセリフと展開に支えられながら、英国のヤクザなヤバさを演出して、闇社会の暴力を描き出した痛快さが売りです。

いきなり冒頭からオチになるターキッシュの愚痴。
そしてユダヤ教徒が聖書におけるカトリック教徒信仰の"処女受胎"を否定する愚痴と、インテリズムな会話を卑猥なトークでお腹いっぱい笑わせてくれる最高のセンスを持つガイ・リッチー監督。

もはやキャスティングに支えられているといっても過言ではないほどに、全てのキャラクターが完璧に立っており、一部の欠けもないほどピースのハマったキャラクターとストーリー。
ターキッシュの狂言回しで進む物語のテンポの良さと、二転三転するダイヤの行方がコミカルに笑いのツボをソソります。
名セリフの宝箱で、日本語吹き替え版で鑑賞しましたが、声優がマッチし過ぎてセリフだけでもお腹いっぱい笑わせてくれました。
"パイキー語"という英国人でも聴き取り辛い訛りを、ろれつの回らない日本語で表現した上手さは脱帽。

映像の魔術師であるガイ・リッチー監督は、構図こそは芸術的ではありませんが、場面転換やショットを組み合わせての躍動感を、TVドラマのようなミニマムな映像で迫力を出させるトリックに長けており、70年代アメリカTVドラマを意識した古臭い演出を交えて、斬新な手法で楽しませてくれます。
キャラクター紹介シーンの次々とワンショットから繋げる流れの上手さ、スローモーションやストップモーション、回転させたり切替ショットを連続させたりと、派手なアクションを演出しているわけではないのに、漫画のコマ割りが繋ぎ合わさったような動きから生まれる迫力が凄いです。

徹底的に人種差別をセリフで皮肉っているのに、何故かスタイリッシュなオシャレ感すらある不思議さ。
恐ろしい暴力の世界に浸かったキャラクターなのに、どこかマヌケな人々が繰り広げるドタバタ劇がコメディーとなっていて、恐怖と笑いにハマってゆきます。

人間を撃ち殺したり、斬り殺したり残酷だと言いながら、犬の中を覗けばいいと煽るアメリカ人と、人間を撃ち殺したり、斬り殺したり簡単なことだと言いながら、犬の中を覗けばいいなんて、どういう意味だ?残酷過ぎると嘆くイギリス人の温度差が笑ってしまいます。
英国人の博愛精神と人間への残酷さが相見える不思議な2面性は、生活習慣の違いなのかブラックジョークが過ぎる悪趣味さなのに、小洒落たジョークに見えるのが可笑しいです。
対するアメリカ人の偽善性もまた、同じ系統である英国人と米国人の極端な違いとして皮肉っております。

人生は騙し合い、出し抜いた者が漁夫の利を得ることが教訓めいており哲学的に物語へ表現されて面白い。
そして世界は回り回ってなんとやらです。
まるでジェットコースターのようにハイスピードでループする寓話的な物語。

何がどうのこうのと講釈を並べる必要のない、一言で言える映画史に残る大傑作である作品へ、5点を付けさせていただきましたが、10点評価でないと評価できない不屈の名作を何度も鑑賞しながら、何度も笑い転げるストレス発散ムービーでございます!!
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