平野レミゼラブル

呪術大戦 陰陽五派 火龍vs白虎の平野レミゼラブルのレビュー・感想・評価

3.2
【闇を祓って闇を祓って夜の帳が下りたら合図だ】
実写版呪術。
フォントとかお洒落でいいですね。うん。凄く闇を祓って夜の帳を下ろして合図して相対して廻る環状戦してそう。
なんでこういう“呪い”のような邦題が無くならないのかというと、リリース日に嬉々として「パチモンだァーッ!!」と借りる呪霊がいるからです。ゲラゲラゲラゲラ


まあ実際劇中で呪術は使われますし、街から突如人が消えて呪術師だけがいる空間になる「領域展開」みたいなこともやるんで邦題はそこまで間違っていません。
内容は奇術師にして呪術師であるおじさんのロビンと、賭け好きのロン・ツォンを始めとするお間抜け警官らのチームで呪術による奇怪な連続殺人事件を追っていくって感じなので「大戦」は言い過ぎなんですけれども。

呪術バトルに関しては結構凝っていて、冒頭からワンタン売りの露天商の老夫婦が異変を察知。さっきまでいた街の人々が突如消失し、不穏な闇が漂ってくる「領域展開」に巻き込まれたと悟ります。
「あなた、穏やかな暮らしも終わりね」「ま、10年以上もこうして暮らしただけで満足さ」と会話しながら、老夫婦を入れる用の棺を引きずる筋肉男と盲目の浮浪者風の呪詛師コンビと相対するのが凄く格好良い。
そのまま戦いに移りますが、主体は鎖や杖にトンファーといった武器を用いたカンフーってのもどこか廻戦に通じるところがありますね。勿論、呪術も使いまして杖から調伏した蛇を這わせて毒を喰らわせたり、「土」属性の老人が呪術によって地を割りそこから蟲を召喚して敵を屠ったりと多様な呪力の使い方が楽しい。

呪詛師2人は何とか退けますが、後にやってきたのは笛を吹くだけで土の奥義を散らす実力を持つ「水」属性の呪詛師。
「お前だけでも逃げろ」「死ぬときは一緒と決めたハズ」と、やはり異様に格好良いやり取りをして石破ラブラブ天驚拳を決める老夫婦ですが、格上の力を持つ水属性の呪詛師に傘だけで攻撃を防がれ、そのまま返り討ちに遭います。
領域内での戦いはそのまま現実世界にフィードバックされるようで、ワンタン売りの老夫婦は倒れ込み、街中で「溺死」するという奇怪な死体と成ってしまう。

もう、この時点でワクワクが止まらないんですが、哀しいかなCG技術と役者の身体能力は全く追いついておらず、呪術アクション全体から凄いチープさが漂ってはいます。いやまあ特別低品質ってワケでもなく、一応形にはなってはいるから全然良いレベルなんだけど、本当の本当に理想とした絵面はもっと別なものなんだろうなってのは同時に理解ってしまいますからね……それこそ予算と技術が無尽蔵にあれば『呪術廻戦』のような高品質バトルに仕立てられるのにっていう製作者側の妥協点がひしひしと感じられてしまうから猶更惜しい。
でも、その格好良さを徹底して追及する姿勢は大好きだぜ……!

んで、本編でもこういう呪術バトルがずっと続くのかと思ったら、前述通りにこの老夫婦殺し含めた謎の呪詛師集団「水」の一派による連続殺人事件の調査に話が映るから若干拍子抜けしてしまう。
いや、推理パートでも主人公のロビンがしっかり活躍していて、逃走犯の靴に蛍光塗料を付着させてわざと逃がして夜間にその足跡を追ってアジトを突き止める奇術師らしいトリッキーな追跡や、呪術による領域展開で事件現場を再現する呪術師らしいチート捜査などを駆使しているのは面白いんですけどね。

ただ、そのパートナーを務める警官コンビがあまりにお間抜けすぎて足を引っ張りまくるから気が散るんですよ!時代は令和だってのに警官コンビのキャラ造形が完全にジャッキー映画の間抜け野郎ですからね!!彼らが絡んだ瞬間に場の雰囲気が一気にジャッキー映画のゆる~い空気に様変わりするもんだから、冒頭の呪術バトル見せられた後だと困惑するしかない。
オマケに犯人の水の一派も呪術バトルを挑んでくるんですが、そこでも警官コンビがお間抜けをやってジャッキー映画ノリにするもんだから温度差の激しさがありすぎる!!

かと思えば、シリアスに戻る時は本当に唐突に戻ります。特に敵の呪詛師の計略にハマり悪夢のような光景を見せられる時に、これまで散々場の空気をジャッキー映画にしていたロン・ツォンが見るのが笑えないくらいにシリアスな回想なんでビビる。
そこから現在のロクデナシ警官に繋がっちゃうのも凄いが、もっと凄いのはその回想やった後も性懲りもなくジャッキー映画ノリに戻してくるところですね。高低差ありすぎてさっきから耳がキーンといってるんだよ!!

最終的に副題通りにロビンと敵がそれぞれ調伏した火龍と白虎の戦いになり、呪術大戦の様相を見せだしますが、火龍が炎を吐いて呪詛師と白虎を焼いたと思ったら呪詛師の被害は失明するだけというロジックが全くわからない。いや、めっちゃ燃えてたけどそれだけなんスか……白虎も無事だし……
しかも失明した後の方が攻撃が激しくなって、普通にロビンたちが追い込まれる始末なんでパワーバランスもよくわかりません。アレか、「視力を捨てる」という「縛り」を課すことで呪力の底上げを図る戦い方か。
あと、決着の付け方が微塵も呪術関係なくて「マジかよ…」とは思いましたが、『呪術廻戦』で平安時代から生き続けている某術師さんも「術師相手であれば積極的に取り入れるべきだと思うよ」と仰せになっておられたのでこれで良いと思います。

オチに関しても突如湿っぽくなって終わる感じなので、最後までシリアスとコメディの振れ幅の大きさに困惑しきりではあったのですが、まあそれでも製作側が何を見せたいかってことはハッキリしていて、色々と足りない中でも苦心して見せようと努力していた絵面は中々良かったんで満足ではありましたヨ。
劇場公開は確かに無理だったんだろうなとは思わせますが、気楽に楽しめる娯楽作品としては十分水準に達していると感じました。少なくとも「よっしゃ、これで実写版『呪術廻戦』を観たって話のタネに出来る!!」ってドブカスみたいな動機で観たヤツが言ってるんだから間違いないッスよ。
じゃあ最後に一曲歌って終わりますか!!

ロスティンペリダイ♪ナイタンデイフィデンアウッ