ケイスケ

こちらあみ子のケイスケのレビュー・感想・評価

こちらあみ子(2022年製作の映画)
4.2
最初の方であみ子が天井に投げたみかんが落ちてこなかったとこなんだあれは…🤔?

『こちらあみ子』というタイトル、とても上手いと思う。「こちらあみ子、応答せよ」に応じた人とそうでない人、非常に考えさせられる。あらすじの“純真な言動が周りの人たちに影響を与え始める”ってポジティブな方かと思うやん…なんやこの映画は…。

広島に暮らす小学5年生のあみ子は少し風変わりだが、優しいお父さんの哲郎と赤ちゃんがお腹にいる母親のさゆり、一緒に登下校をしてくれるお兄ちゃんらに見守られながら自由に過ごしている。しかし、あみ子のあまりにも純真な言動が周りの人たちに影響を与え始める。

自由奔放なあみ子の目線で描かれる本作。まだ小学生の頃はその自由さも微笑ましく見られるのだが、成長期の中学時代では周りから“異質”な存在として扱われイジメの対象になってしまう。作中ではハッキリとは明言されないが、あみ子は発達障害です。

前述したようにあみ子目線で描かれるため序盤はあれだけ出ていたあみ子の家族が、急激に出なくなるんですよね。お母さんがどこにいるかわからなかったりする描写を見るにお父さんが、病んだお母さんや、グレた兄の詳細をあみ子に知らせなかったんじゃないかと。

あみ子は学校で拒絶されますが、1人あみ子の「応答せよ」に答えてくれる坊主の生徒がいます。この子もなかなか口悪いけど良い奴でしたね。なんで去り際にちょっとかっこいいんだよお前は笑。学校描写で痛いところを突かれたと思ったのは、自分も人と少し変わった生徒に対して少なからずこういう態度を取っていなかったとは言えないところ。学校シーンは辛かった…。

ともすれば発達障害の子供が親に捨てられる可哀想な話に見えますが、この映画って奥行きがものすごく広くて、登場人物のちょっとした視線や動きで感情の流れが計算されてるんですよね。これは森井監督の手腕、俳優陣の演技、そして恐るべき新人の大沢一菜さんの存在感でしょう。傑作でした!